Research Abstract |
新規内因性ポリペプチドSLURP(secreted mammalian Ly-6/urokinase-type plasminogen activator receptor (uPAR)-related protein)-1は,α7 nAChRに対するリガンドである.SLURP-1は皮膚のケラチノサイトで発見された.しかしながら,我々は,気管支線毛上皮細胞がSLURP-1を産生していることを発見した(平成20年度).気管支線毛上皮細胞上のα7 nAChRは,増殖,分化,傷害からの保護や修復に関与している.そのため,SLURP-1は,気管支線毛上皮細胞のホメオステーシスの維持に重要な働孝をしているものと考えられる.そこで,平成21年度の研究においては,喘息モデル・マウスを作製し,気管支におけるSLURP-1産生の変化を検討した.(1)RT-PCRおよびWestern Blottingによって,喘息モデルの肺組織におけるSLURP-1の遺伝子と蛋白質の発現は,正常マウスと比較して有意に低下していることが発見された.(2)組織化学および免疫組織化学的検討結果から,喘息モデルの気管支におけるSLURP-1産生低下が確認された.喘息モデルでは気道上皮細胞の肥厚と線毛上皮細胞に置き換わって粘液分泌杯細胞化生が起こっていることが判明した.その結果として,気管支におけるSLURP-1の産生が低下したものと考えられる,喘息におけるSLURP-1産生低下は,気道に起こった傷害の修復を遅延させ,さらなる悪化を誘導する可能性が考えられる.さらに,SLURP-1産生低下によって,α7 nAChRを介する気道に侵出したマクロファージからの炎症促進性サイトカイン遊離抑制効果も低下することから,喘息悪化を誘導する可能性が考えられる.本研究結果より,SLURP-1産生を増強させる処置,またはSLURP-1そのものが,喘息の治療における手段の一つとなる可能性が明らかになった.
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