2008 Fiscal Year Annual Research Report
脳脊髄液減少症の発症機序と硬膜外ブラッドパッチの有効性に関する形態学的解析
Project/Area Number |
20590173
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
三浦 真弘 Oita University, 医学部, 講師 (50199957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紀 瑞成 大分大学, 医学部, 助教 (60305034)
内野 哲哉 大分大学, 医学部, 助教 (70423697)
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Keywords | 脳脊髄液減少症 / 硬膜外リンパ系 / 硬膜外ブラッドパッチ / 脊髄髄膜 / 脈管外通液路 / 酵素組織化学 / 髄液漏出 / くも膜下角 |
Research Abstract |
【結果】(1)C4〜Th1領域の硬膜外面には神経根に集束する硬膜外リンパ管網(ELN)が発達した。(2)神経根部クモ膜反転部(SAA)では炭粒子(CP)の硬膜線維内への漏出が顕著であった。頸部硬膜-神経根境界部には、一部CPが顆粒状に密集した脊髄クモ膜顆粒(SAG)が認められた。SAG先端部は硬膜線維間に存在する発達した拡張リンパ管に覆われた。(3)SAG周囲にはELNおよびALPase陽性血管が豊富に分布した。(4)頸部SAA周囲の硬膜は、構成する膠原線維束の層と厚さが急激に減じ、他の硬膜領域と比較してくも膜から線維束間に漏出するCP量に明らかな違いを示した。また同部硬膜神経根移行部には肉眼的にも明瞭なInk cuff現象が認められた。(5)EBPは2例とも硬膜広域に密着する大きな血塊形成には至らなかった。SAA周囲に付着した血塊は、2例とも神経根硬膜外面との間にELNや血管を含んだ豊富なfat padが介在した。SEM観察では、SAG・SSA周囲の硬膜は他の領域とは異なり多数の小線維束が不規則に蛇行した膠原線維層疎部領域が認められた。また、神経根硬膜移行部において局所的に、5〜20μm前後の篩状斑様構造が硬膜固有層に明らかに認められた。 【考察】本検索において、SSA領域の髄膜部は他の領域と比較して経リンパCSF吸収能が高いことが推測された。またその一方てで同部は引っ張り外力に弱く、構成線維束が拡張または破綻しやすい易髄漏硬膜であることも示唆された。易髄漏硬膜とEBPとの関係については、SSA髄膜部に対するEBPの密着精度がCFHに起因した髄漏制御において重要な形態学的因子の一つと考えられるが、本検索では、同領域神経根下方にはELSおよび血管を含んだ分厚いfad padが硬膜表層に密着していることから、EBPが易髄漏部を直接圧迫または閉塞させることは形態学的特徴において困難であると考えられた。
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