2009 Fiscal Year Annual Research Report
脳脊髄液減少症の発症機序と硬膜外ブラッドパッチの有効性に関する形態学的解析
Project/Area Number |
20590173
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
三浦 真弘 Oita University, 医学部, 講師 (50199957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紀 瑞成 大分大学, 医学部, 助教 (60305034)
内野 哲哉 大分大学, 医学部, 助教 (70423697)
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Keywords | 脳脊髄液減少症 / 硬膜外リンパ系 / 硬膜外ブラッドパッチ / 脊髄髄膜 / 脈管外通液路 / 酵素組織化学 / 髄液漏出 / 脊髄くも膜下角 |
Research Abstract |
【結果】(1)CH-40クモ膜下腔内注入実験から、炭粒子の硬膜浸潤ならびにその漏出好発部位は硬膜-神経根移行部であることと、同現象が硬膜外リンパ管網の発達する頸部髄節領域において顕著に出現した。(2)脳脊髄液減少症の画像診断においてしばしば報告される腰髄膜領域のCSF漏出現象は認められなかった。(3)注入炭粒子は、頸-胸髄領域から脊髄硬膜外リンパ系を介して一般体性リンパ系に速やかに排導された。(4)硬膜線維内の炭粒子の浸潤速度と比較すると、硬膜外リンパ管内に進入後の炭粒子の排導動態は極めて迅速であった。(5)実験的EBPでは、頸髄領域と同じく腰髄神経根領域においても髄膜密着性をともなう血塊形成は観察されなかった。(6)EBPにおいて唯一生じた血塊群の髄膜付着領域は、硬膜背側部に限局した。(7)硬膜-神経根移行部に出現した脊髄クモ膜顆粒は、個体間で出現頻度は低く髄節全体の神経根8%程度であった。(8)クモ膜顆粒先端部は検索全例で硬膜内に留まっていたが、顆粒部はすべて発達したリンパ管とALPase陽性毛細血管網によって被覆された。(9)成人神経根基部硬膜において3~5μmの小孔群(篩状斑)が頸-胸髄領域において認められた。一方胎児では発達した篩状斑が神経根広汎に認められた。(10)篩状斑の分布領域と硬膜外リンパ系の発達領域との間には高い相関が認められた。(11)炭粒子の強い硬膜浸潤領域には篩状斑構造が局在し、またクモ膜内側の境界細胞間においても2μm程度のarachnoid channelが認められた。(12)腰髄穿刺実験では、穿刺針によって弁蓋状孔が形成された。【考察】EBPの髄液漏出制御に必要と考えられる形態学的根拠((1)神経根基部篩状斑、(2)クモ膜顆粒部、(3)硬膜外リンパ系発達部)、(4)解剖学的脆弱硬膜部領域において、血塊形成ならびにその髄膜定着は同部に常在するfatpadによって困難と判断された。ただし腰髄穿刺にともなう硬膜背側部における髄液漏出制御に対してはEBP効果が期待された。
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