2009 Fiscal Year Annual Research Report
体性感覚刺激による脳神経伝達機能変化と情動・自律反応相関
Project/Area Number |
20590216
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
黒澤 美枝子 International University of Health and Welfare, 薬学部, 教授 (30178131)
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Keywords | 触刺激 / 神経伝達物質 / ドーパミン / 側坐核 / 腹側被蓋野 / 侵害性刺激 / 情動 / 自律反応 |
Research Abstract |
本研究は、触刺激を中心に体性感覚刺激が脳内神経伝達機能に与える影響と、その時の情動行動並びに自律機能の変化を動物で明らかにすることを目的としている。平成21年度は引き続き、快情動の発生に深く関連することが知られている"側坐核でのドーパミン放出"に着目し、麻酔下のラットで痛み刺激の影響を検討した。その結果、皮膚への侵害性(痛み)刺激(ピンチ)は側坐核ドーパミン放出を変化させないことが明らかとなった。つまり、側坐核ドーパミン放出は非侵害性の触刺激によって増加する(平成20年度)が、侵害性のピンチ刺激には反応しないことが明らかとなった。平成21年度はまた、「扁桃体」からのセロトニン放出に着目し、皮膚触刺激の影響を麻酔下ラットで検討した。扁桃体のセロトニンは、不安や恐怖の制御に重要な機能を有することが知られている。皮膚への触刺激によって、側坐核ドーパミンとは逆に、扁桃体セロトニン放出は抑制されることが明らかとなった。 皮膚触刺激による側坐核ドーパミン放出、扁桃体セロトニン放出はいずれも、情動の影響のない麻酔下の動物でも認められたことより、情動によって2次的に起きた反応ではなく、体性感覚刺激による直接的な反応と考えられた。体表からの触刺激によって、不安や抑うつ感の軽減、リラックス効果などが誘発されることが知られているが、その脳内機序は不明である。本研究により、その脳内機序の一部が明らかにされたと考えられる。すなわち、本実験は昔から言われる"手当て"、つまり皮膚上からの刺激の有用性について、科学的証拠の1つを示したものと考えられる。今後は、側坐核や扁桃体でのドーパミン、セロトニンの変化が自律機能と情動にどのように関わるのかを検討する。
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Research Products
(12 results)