2010 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞のATP感受性K^+チャネルの分子同定とその機能的役割の解析
Project/Area Number |
20590249
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中谷 晴昭 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (60113594)
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Keywords | K_<ATP>チャネル / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / 内臓平滑筋細胞 / 遺伝子欠損動物 |
Research Abstract |
平成21年度までの研究によって、マウス血管内皮細胞にはおそらく機能的なATP感受性K^+チャネルは存在しない可能性が高いという結論に至った。従って、以前海外の研究室から報告された冠血管の攣縮の原因は冠動脈平滑筋細胞の機能異常に起因するという結論に達した。以前行った機能研究において、血管平滑筋細胞のパッチクランプ法を用いた膜電流解析によりピナシジルによって活性化し、グリベンクラミドで抑制可能なK^+電流、すなわちATP感受性K^+電流はKir6.2欠損マウスの大動脈平滑筋細胞からは野生型の大動脈平滑筋細胞と同様に記録できたが、Kir6.1欠損マウスの大動脈平滑筋細胞からは記録できなかった。これらの結果から、血管平滑筋細胞のATP感受性K^+チャネルの構成ポア分子はKir6.1であると結論できる。内臓平滑筋細胞のATP感受性K^+チャネルの構成ポア分子を同定するために、Kir6.2欠損マウスおよびKir6.1欠損マウスの膀胱組織より酵素的に平滑筋細胞を単離し、パッチクランプ法によって膜電流を測定した。Kir6.2欠損マウスの膀胱平滑筋細胞ではピナシジルは0.1μM以上の濃度で濃度依存性に10μMのグリベンクラミドに感受性を示すK^+電流を惹起させた。一方、Kir6.1欠損マウスの膀胱から単離した平滑筋細胞ではピナシジルは100μMの濃度でもグリベンクラミド感受性K^+電流を惹起しなかった。これらの結果から、内臓平滑筋細胞のATP感受性K^+チャネルにおいても、血管平滑筋細胞のATP感受性K^+チャネルにおいても、そのポア成分はKir6.1から成ることが示唆された。このように、少なくてもマウスという動物種においては平滑筋細胞のATP感受性K^+チャネルの機能発現にはKir6.1は重要な役割を果たすと結論することができる。
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