2008 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍微小環境を調節するG蛋白質共役受容体と4回膜貫通蛋白質とのクロストーク
Project/Area Number |
20590363
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
古屋 充子 Yokohama City University, 医学部, 准教授 (10361445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米満 吉和 千葉大学, 医学研究院, 教授 (40315065)
木村 定雄 千葉大学, 医学研究院, 教授 (40134225)
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Keywords | 腫瘍 / 4回膜貫通蛋白質 / G蛋白質 / シグナル / クロストーク |
Research Abstract |
「研究の目的」 腫瘍の浸潤転移機構には、腫瘍細胞と宿主とのクロストークの解明が不可欠である。近年,病巣周囲へ動員される骨髄由来の血管内皮前駆細胞や,骨髄系単球細胞,間葉系細胞の特性解明がすすむにつれ,腫瘍炎症性微小環境の役割は新たな展開を見せている。なかでも腫瘍の浸潤や血管新生を促進させるサイトカイン・ケモカインシグナルが果たす役割は大きく、腫瘍がサイトカイン・ケモカインを利用して宿主に対し、浸潤好性環境へとリモデリングを促すことが、様々な研究を通して明らかになってきた。申請者はこれまで、血管作用を有するG蛋白質共益受容体(GPCR)の解析を行ってきた。その中で、GPCRの下流にある調節因子RGS5が腫瘍血管特異的に高発現することをヒト腫瘍で初めて明らかにした(Furuya M et al, J Pathol2004).またGPCRのなかでも、IFN-γ誘導性ケモカインとその受容体CXCR3が、実は腫瘍細胞自身においてオートクラインに働き腫瘍細胞の増殖や浸潤能を亢進させている可能性を発表してきた(Furuya M et al, Cancer2005,Hum Pathol2007).解析の結果から、ある種の腫瘍は細胞表面にCXCR3を発現しており、自らあるいは周囲細胞からのIFN-・誘導性ケモカイン分泌を促すことで炎症環境を亢進させながら、それを巧みに利用して腫瘍進展を果たしていると予想される結果が腎癌や卵巣癌で得られた。 「研究の成果」 本年度申請者らは、当施設で施行された卵巣腫瘍手術検体を網羅的にシークエンス解析し、腫瘍組織で発現しているCXCR3には、正常卵巣に比較して野生型CXCR3とは異なる配列が強く認められることを突き止めた。そのうち一つは2004年に発表された変異型と同一であった(Ehlert JE, J Immunol. 2004).この結果から、卵巣腫瘍におけるCXCR3シグナルは抗腫瘍、抗血管新生抑制効果に障害をきたしていることが強く示唆される。解析した正常卵巣では蛋白レベルにおいて変異型は殆ど認められないが、卵巣癌検体では5例中3例に変異型が認められ、うち1例は全体に変異型にシフトしていた。さらに卵巣癌細胞株においては5例中5例全てに変異型が認められた。 「研究の展望」 この結果から、腫瘍におけるIFN-γ誘導性炎症誘導は卵巣癌において異常なシグナル経路を活性化していることが予想される。変異型は従来のGPCR構造をもたず、4-5回膜貫通蛋白にとどまると考えられることから、リガンド刺激に対して異なる反応を示すことや細胞内局在が通常と異なる可能性が考えられる。免疫染色においても殆どの卵巣腫瘍でCXCR3の局在が細胞質であること、卵巣癌細胞株においても局在が細胞質主体のものが6例中3例に認められることから、今後はその意義を理解するために、CXCR3の野生型と変異型の違いを遺伝子導入、ノックダウン系を用い、機能解析を行っていく。
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Research Products
(10 results)