Research Abstract |
昨年度報告した米国肥満者を対象とした研究で、血清Angiopoietin-like protein-3(ANGPTL3)値が、我々が開発した系で測定した肝性リパーゼ(HL)活性と逆相関(r=-0.38 p<0.001)した結果を受け、本年度は,精製ANGPTL3蛋白がHL活性を抑制するか否かを検討した。Angiopoietin-Like 3,FLAG-tagged,Human,Recombinant(Adipogen社)20μlにリン酸緩衝食塩水80μlを混和し、100μl(100μg/ml)を作成し原液とした。希釈系列を作成、20μlとヘパリン静注後血漿180μlを混和し、37度で3時間インキュベーションした(ANGPTL3の最終濃度を0-5μg/ml)後、溶液中のHL活性を測定した。0,0.01,0.02,0.3,1.25,2.5,5μg/ml濃度のANGPTL3を添加したときのHL活性はそれぞれ、63.7,69.1,68.1,67.9,68.4,68.5,66.8U/Lであり、HL活性の明らかな抑制は認められなかった。同様の実験を4度で3時間インキュベーションして行った。0,0.01,0.02,0.3,1.25,2.5,5μg/ml濃度のANGPTL3を添加したときのHL活性はそれぞれ、75.5,77.4,76.6,74.6,74.6,74.8,74.4U/Lで、やはり抑制効果を認めなかった。ANGPTL3の血中濃度は一般に0.2から0.3μg/ml程度であることを考えると、実験に用いた濃度は生理範囲内であり、この結果から、ANGPTL3はHL活性を抑制しないことが考えられる。従って、冒頭で述べたANGPTL3蛋白とHL活性との逆相関は、前者が後者を抑制するというよりも、むしろ両者を逆方向に制御する代謝動態が上流に存在することが示唆された。これまでの報告で、HL活性はヒトにおいて、内臓脂肪やインスリン抵抗性の個体で増加する。一方、ANGPTL3はヒトでは明らかでないが、動物モデルで、インスリン欠乏マウスとインスリン抵抗性マウスの双方で増加することが報告されている。
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