2011 Fiscal Year Annual Research Report
髄液中の酸化蛋白質のプロテオーム解析によるアルツハイマー病早期診断マーカーの開発
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20590594
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
戸田 年総 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (80133635)
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Keywords | 認知症 / 髄液バイオマーカー / 酸化タンパク質 / プロテオーム解析 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)の発症にはアミロイドβ(Aβ)の蓄積が深く関わっており、家族性のADではプレセニリンなどの原因遺伝子の変異がAβの蓄積を促す要因となっている。一方、高齢者の認知症の大部分を占める孤発性のADでは遺伝子の変異が認められず、酸化ストレスなどの環境要因がAβの蓄積を促しているものと考えられている。そこで本研究では、酸化ストレスによる神経変性のリスクを予測し、早期診断および治療方針の決定に役立つ新たなバイオマーカーを開発することを目的として、髄液中の酸化修飾蛋白質に絞ったプロテオーム解析を行なってきた。 その結果、昨年度までの研究において髄液中ではトランスサイレチンが特に強くカルボニル化を受けていることが明らかとなり、トランスサイレチンの酸化修飾を詳しく分析することで脳内の酸化ストレスをモニターできる可能性があることがわかった。そもそも脳内におけるトランスサイレチンの機能は明らかでないが、Aβに結合する性質を有していることから、Aβのオリゴマー形成を阻害しアルツハイマー病の発症を抑制している可能性が示唆されている。 そこで本年度は、トランスサイレチンのN末端に近く、Aβとの結合性に関与している可能性が高いメチオニン残基に着目し、質量分析計を用いてメチオニンの酸化レベルを数値化する技術を開発し、AD患者髄液のトランスサイレチンの分析に応用した。そもそもメチオニンの酸化型であるスルホキシド体は質量分析で頻繁に検出されることから、操作過程で起きるアーティファクトであるとされていたが、本研究で我々は、髄液検体の保存方法および分析の操作を最適化することによって、生体内におけるメチオニンの酸化レベルを数値化できることを確かめることができたことから、今後メチオニンの酸化レベルと認知症の病態との関係を詳しく解析することによって、新たなバイオマーカーの開発につながると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」の『先に見いだしたカルボニル化に加え、トランスサイレチンにおけるメチオニン残基の酸化状態についても詳しい解析を行い、アルツハイマー病の発症および重症化のリスクを評価するための指標として利用が可能かどうか調べる』ことが、一応達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
髄液中のトランスサイレチンのメチオニン酸化修飾レベルをより簡便に定量解析できる方法を開発し、臨床検査に使用可能な方法を確立させることが重要であると考える。
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Research Products
(10 results)