2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20590615
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
渡辺 哲 Tokai University, 医学部, 教授 (10129744)
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Keywords | 予防医学 / 脂肪肝 / 肝発癌 / 酪酸菌 |
Research Abstract |
人における非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルとして、コリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食投与ラットを用い、脂肪肝からの肝発癌過程の分子機構を検討した。 実験にはFisherラットを用い、CDAA食を最大4ヵ月まで与え、コントロールとしてCSAA食を投与した。また、腸管内で酪酸を産生する酪酸菌を2週目よりCDAA食に混ぜて経口投与し、その効果を検討した。 CDAA食投与2週目では全例脂肪肝がみられた。2ヵ月目では、CDAA食投与群では脂肪肝と共にAzan染色で軽度の線維化が認められた。CSAA食では肝組織に異常はみられなかった。投与4ヵ月目では、CDAA食投与群では脂肪沈着と共に著明な線維化、再生結節がみられ、肝硬変への進展が認められた。CSAA食群では異常はみられなかった。CDAA食+酢酸菌投与群では、Azan染色による線維化の程度が軽い傾向が見られた。酸化ストレスのマーカーである8-OHdGと4-HNEの酵素抗体法による検出では、両者ともCDAA食群では陽性であったが、酪酸菌投与群では4-HNEの低下傾向がみられた。 Western blot法による解析では、CDAA食群では2ヵ月、4ヵ月で炎症性サイトカインNF-κB(RelA)の著明な発現増加がみられた。TGF-βの発現はみられなかった。肝線維化に関与するマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9の発現は、2ヵ月よりも4ヵ月で著明であった。酪酸菌投与群ではMMP-9の発現は低下していた。癌抑制遺伝子P21WAF1の発現は、2ヵ月、4ヵ月と増加したが、4ヵ月ではCDAA食群は減少したのに対し、酪酸菌投与群では高発現を維持していた。 以上より、CDAA食による肝線維化の進行には酸化ストレスとNF-κBが関与していることが示唆された。酪酸菌投与は、この課程に変化を与えている可能性があるが、さらに検討が必要である。
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Research Products
(4 results)