2008 Fiscal Year Annual Research Report
インスリンシグナル破綻がアルツハイマー病の分子病態に及ぼす影響
Project/Area Number |
20590990
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
池内 健 Niigata University, 脳研究所, 助教 (20372469)
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Keywords | 認知症 / 脳神経疾患 / 神経科学 / 脂質 / 薬理学 |
Research Abstract |
糖尿病の病態として注目されているインスリン抵抗性とアルツハイマー病の関連が,国内外の疫学研究により明らかにされており,インスリン抵抗性およびそれに伴う高インスリン血症はアルツハイマー病の危険因子として認識され始めている.インスリンシグナルの破綻がアルツハイマー病の病態に与える分子メカニズムを明らかにする目的で本研究を実施した. 平成20年度においては高インスリン状態がβアミロイド産生に及ぼす影響について検討した.0-1000nMの濃度のインスリンをN2a swe細胞の培養液に添加し,16時間後に培養液中のAβをウエスタンブロットにより検討した.培養液中のAβはインスリン濃度依存性に増加した.さらにELISAにより培養液中のAβ40およびAβ42を分子種特異的に定量したところ,インスリン添加によりAβ40および42ともに有意な増加を認めたが,Aβ42/40比はインスリン添加により有意な変化は示さなかった 次に,細胞内外のAβによるインスリンシグナル伝達障害を検討する目的で,Aβを過剰に産生するN2a細胞(APPswe)を作成した.この細胞では,細胞外のみならず細胞内にも過剰のAβが蓄積する.野生型N2a細胞にインスリン1μM刺激を加えたところ,刺激後15-30分でAktのリン酸化がピークを示したのに対し,N2a細胞(APPswe)ではAktのリン酸化のピークは刺激後60分と遅延していた.またN2a細胞(APPswe)では野生型N2a細胞に比し,GSK3βのリン酸化レベルはインスリン刺激前で蓄積を認める一方,インスリン刺激後ほとんど増加を認めなかった.これらの結果から,過剰なAβの蓄積はインスリンシグナル伝達を障害する可能性が示唆された.
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