2010 Fiscal Year Annual Research Report
インスリンシグナル破綻がアルツハイマー病の分子病態に及ぼす影響
Project/Area Number |
20590990
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
池内 健 新潟大学, 脳研究所, 助教 (20372469)
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Keywords | 認知症 / 脳神経疾患 / 神経科学 / 脂質 / 薬理学 |
Research Abstract |
糖尿病の病態として注目されているインスリン抵抗性とアルツハイマー病の関連が,国内外の疫学研究により明らかにされており,インスリン抵抗性はアルツハイマー病の重要な危険因子として認識されている.しかしながら,インスリン抵抗性がアルツハイマー病の発病あるいは病態促進に関与する具体的な現象についての解析はほとんどない.本研究では,アルツハイマー病の分子病態にインスリンシグナル伝達破綻が及ぼす分子機序について培養細胞を用いて明らかにすることを目的とした. 本年度はマウス胎児由来初代神経培養細胞を用いた新しい共培養システムを構築し,インスリンシグナル伝達とアルツハイマー病の病態について検討した.この培養システムでは,ドナー細胞とレシピエント細胞を独立した細胞ディッシュで培養することで,ドナー細胞が産生する細胞外Aβがレシピエント細胞内のタウリン酸化を誘導することが可能である.ドナー細胞にAβを過剰産生するSwedish型アミロイド前駆体タンパク遺伝子を発現させ,レシピエント細胞(初代神経培養細胞)の内在性タウへの影響を検討した.ドナー細胞にAβを過剰発現させるとレシピエント細胞の内在性タウ増強効果がリン酸化タウ特異抗体により検出された.同様の条件下で,インスリン添加を行いインスリンシグナル伝達を検討したところ,過剰Aβ存在下ではインスリンシグナル伝達不全の存在が示唆された. 以上より,Aβ依存性異常タウリン酸化にはインスリンシグナル伝達不全が関与していることが示唆され,インスリンシグナル伝達を改善させる薬剤がアルツハイマー病の治療に繋がる可能性が示された.
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