2010 Fiscal Year Annual Research Report
mRNA監視機構に起因する神経疾患の病態と治療に関する研究
Project/Area Number |
20591015
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
臼杵 扶佐子 国立水俣病総合研究センター, 臨床部, 室長 (50185013)
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Keywords | Nonsense-mediated mRNA decay(NMD) / NMD構成分子 / siRNA / NMD抑制 / Ullrich病繊維芽細胞 / 腫瘍細胞 / 細胞生理機能 / 生体ストレス応答 |
Research Abstract |
mRNA監視機構とされるnonsense-mediated mRNA decay(NMD)は、遺伝子のリーディングフレーム途中に異常な早期終止コドンPTCが生じた変異mRNAを排除する生体機構である。NMDがその病態に負に作用することが明らかになったPTCを有するUllrich病患者繊維芽細胞をモデル細胞として、喪失していたcollagen VI α2 mRNA及びcollagen VI蛋白質を部分的に回復させることが明らかになったNMD関連分子であるUpf1、SMG-1、SMG-8、SMG6、SMG7、MAGOH、BtZ、RNPS1を標的とした合成siRNAによるNMD抑制が、細胞生理機能に及ぼす影響について検討した。NMD抑制により発現が予想されるaberrant proteinによるER stressの発生について、ER stress関連蛋白質の発現をwestern blotにて検討したが、これら7種のNMD関連分子のノックダウンではER stressの発生は認められなかった。細胞生理機能に及ぼす影響から、これら7種のNMD関連分子の中では、細胞増殖への影響が認められなかったSMG-8のノックダウンによるNMD抑制が有用と考えられた。そこで、SMG-8の長期的なノックダウンによるNMD抑制が細胞生理機能に及ぼす影響についてさらに検討するために、ヒト正常筋芽細胞株を用いてSMG-1、SMG-8を標的としたsiRNA安定発現細胞株を確立した。NMDの長期抑制により予想される変異蛋白質の増加によるER stressの発生について検討したが、いずれの細胞株でもER stressの発生は確認されなかったことから、NMD抑制治療の標的として長期的にもSMG-8の有用性が示唆された。NMD抑制による遺伝子疾患の治療をin vivoへ応用するためには、組織特異的にsiRNAを発現させる必要がある。そこで、筋肉特異的にNMDを抑制させるために、筋特異的なプロモーターを利用したsiRNA発現ベクターの確立を試みた。そのためにまず、マウス細胞系のNMDを抑制可能なsiRNAについて検討し、マウス配列が明らかとなっているNMD構成分子であるSMG-1,SMG-7を標的とした合成siRNAを作成した。これらのsiRNAをマウス筋芽細胞株に導入したところ、それぞれの蛋白分子のノックダウンとNMD抑制が確認できた。現在、筋特異的なプロモーターを選択して、siRNA発現ベクターの作成を試みている。
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