2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規MAP3K抑制因子STK38を標的とした放射線増感
Project/Area Number |
20591491
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榎本 敦 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 助教 (20323602)
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Keywords | ストレスシグナル / MAP3K / STK38 / 酸化ストレス / リン酸化 |
Research Abstract |
MAPKシグナル伝達経路は、MAPKKK(MAP3K),MAPKK(MAP2K),MAPKからなるリン酸化カスケードである。哺乳類細胞では、ERK, JNK, P38の3経路が存在し、増殖、細胞死、分化などの制御に深く関わっている。その中で、JNKカスケードは、特にストレス応答伝達経路として細胞増殖・細胞死を制御していると考えられている。私はJNKカスケードの最上流分子であるMAPKKK(MEKK1,2,3)の活性化を抑制する新規のセリン・スレオニンキナーゼ(STK38)を同定した(Enomoto et al., Oncogene 2008)。In vitroにおいて、STK38はJNKカスケード最上流因子であるMAP3Kの活性化を阻害し、JNKカスケードのシグナル伝達を抑制した。 (目的)今年度、私は哺乳類細胞を用いて、様々な刺激に対するSTK38活性を解析し、刺激応答性の有無を検討する。さらにその分子制御機構を明らかにすることを目的とした。 (結果と考察)STK38は、X線や過酸化水素などの酸化ストレス特異的に活性化されることを見出し、さらにこのSTK38の活性化は、PI-3K阻害剤Wortmanninによって抑制されることも明らかになった。このことは、酸化ストレスがPI-3KもしくはDNA損傷シグナル伝達因子であり、PI-3K様のプロテインキナーゼATM,DNA-PKなどがSTK38の活性化に関与している可能性を示唆している。今後は、DNA-PKやATMの特異的阻害剤によるSTK38活性への影響を解析し、DNA損傷からMAPKカスケードへのシグナル伝達クロストークについて検討する。さらに未だ明らかにされていないSTK38の基質を同定するために、2次元電気泳動を行い、活性化STK38を細胞全タンパク質に反応させたときに現れるスポットが複数存在することが判明した。このことは、酸化ストレスにより活性化したSTK38によってリン酸化されるタンパク質が存在することを示す。またSTK38を標的としたshRNA発現ベクターを4種類作製し、哺乳類細胞に導入した結果、そのうちの2種で有意に発現抑制を誘導していることを確認した。今後は、STK38をshRNAにより発現をノックダウンした細胞の酸化ストレス応答を解析することにより、新規の放射線増感の基礎を確立する。
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