2009 Fiscal Year Annual Research Report
CXCR4/CXCL12とHB-EGFを標的とした胃癌標的治療法の開発
Project/Area Number |
20591565
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安本 和生 Kanazawa University, 附属病院, 講師 (90262592)
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Keywords | 胃癌 / 癌性腹膜炎 / CXCR4 / CXCL12 axis / 分子標的治療 / HB-EGF / Amphiregulin / EGF / EGFR ligands |
Research Abstract |
胃癌腹膜播種は、最も難治性の病態で効果的な治療法も見出されていない。我々は、CXCL12/CXCR4 axisの本病態への関与を初めて明らかにした(Cancer Res 2006)。今年度は、CXCL12をはじめ癌性腹水中に豊富に存在する病態増悪因子(増殖因子)に着目し、その同定と臨床的意義について検討した。その結果、がん性腹水中にCXCL12,VEGF,TGFβ,HB-EGF,Amphiregulinが豊富に存在することが判明した。一方、EGF,TGFαは測定感度以下であった。ヒト胃癌細胞株の細胞培養上清中にはCXCL12は検出されないが、HB-EGF, Amphiregulinが豊富に存在した。この培養上清中HB-EGF蛋白誘導能とマウス移植腹膜播種形成能には明らかな関連性が確認された。腹膜播種標的臓器(細胞)である腹膜中皮細胞からCXCL12が、繊維芽細胞からはCXCL12のみならずAmphiregulinが産生誘導されることが新たに判明した。これらEGFRリガンド(HB-EGF、Amphiregulin)には、ヒト胃癌細胞に対する極めて高い増殖活性が存在した。胃癌細胞上に発現するCXCR4は、これらEGFRリガンド(HB-EGF、Amphiregulin)の刺激によって発現が亢進し、またCXCL12は胃癌細胞からのEGFRリガンド(HB-EGF、Amphiregulin)の自己産生を増強することも判明した。すなわち、CXCL12/CXCR4 axisとEGFRリガンド(HB-EGF、Amphiregulin)は相互に関連性を有し胃癌腹膜播種の病態形成へと導くものと推察された。さらに、マウスXenograft腹膜播種モデルを用いた検討で、抗ヒトEGFR抗体投与により腹膜播種形成が有意に抑制されることが判明した。胃癌腹膜播種発症にはCXCR4/CXCL12 axisとともにEGFRリガンドであるHB-EGFやAmphiregulinが非常に強力な増殖因子として癌細胞ならびに間質細胞から産生誘導され病態形成に深く関与することが推察された。さらに、動物モデルを用いた腹膜播種発症の抑制が確認されたことで胃癌腹膜播種に対しEGFRをターゲットとした新たな分子標的治療の可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)