2009 Fiscal Year Annual Research Report
グリオーマに対するペプチドCTL療法効率化とテモゾロミドによる免疫抑制環境の改善
Project/Area Number |
20591718
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
佐藤 秀光 Yokohama City University, 医学研究科, 客員研究員 (70363801)
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Keywords | 悪性グリオーマ / 免疫療法 / ペプチド / 細胞傷害性T細胞 / 樹状細胞 / テモゾロミド / バルプロ酸 / HDAC阻害作用 |
Research Abstract |
難治性疾患として知られる悪性グリオーマは、放射線療法と抗がん剤(テモゾロミド)の併用が標準的治療であるが、それでも治癒に至る例はすくない。そこで免疫療法などあらたな治療法の開発が望まれている。脳は、免疫特権部位であり、免疫細胞が到達しにくいと考えられているが、悪性度の最も高い膠芽腫に対して、免疫療法で治癒した例も我々は経験している。そこで、我々は免疫療法の効率化を図ることを最終的な目的とする。 我々は日本人の60%以上を占めるHLA-A24に適合するペプチドにターゲットを絞って研究を行った。まず近年次々と明らかになりつつある既知のグリオーマの腫瘍抗原に対する細胞傷害性T細胞(以下CTL)の誘導を行い、4種類の新規HLA-A24拘束性ペプチドを見いだした。免疫療法では、一種類の標的だけでは腫瘍を消滅させることは非常に困難なため、複数の標的を開発し続けることは意義深いと考えられる。 さらに、免疫療法の治療効率を上げるために、グリオーマ患者での使用頻度が高い抗けいれん薬のなかからバルプロ酸のHDAC阻害作用に着目し、免疫療法との併用効果を検討した。グリオーマ細胞にバルプロ酸を作用させると、HDAC阻害作用によりHLA-class I、 Fasの発現は上昇、FasLの発現低下することを確認した。この作用は、他の抗てんかん薬であるゾニサミドには認められないものであった。さらに、ペプチドで誘導されたCTLの細胞傷害活性も、バルプロ酸を作用させることにより上昇した。これらの知見から、グリオーマの治療に免疫療法に併用するべき抗けいれん薬は、バルプロ酸が推奨されると考えられた。本研究では、すでに市販され安全性の確立している薬剤のあらたな効果の発見されたもので、臨床に直結した非常に意義深いものだと考えられる。
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Research Products
(3 results)