2008 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた慢性疼痛の高次脳機能評価法の確立
Project/Area Number |
20591826
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
福井 聖 Shiga University of Medical Science, 医学部, 講師 (80303783)
|
Keywords | MR Spectroscopy / 前帯状回 / 前頭前野 / NAA / GABA / 局所脳神経機能 / 慢性疼痛 |
Research Abstract |
難治性の慢性疼痛患者では、脳内の痛覚処理機構に変化が生じる可能性が指摘されている。核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を用いて、慢性神経障害性疼痛患者及び複合性局所疼痛症候群(CRPS)における局所脳機能の変化を評価した。 慢性神経障害性疼痛患者、CRPSの患者を対象に、前帯状回および前頭前野におけるN-アセチルアスパラギン酸(NAA)濃度、コリン(Cho)濃度を測定した。痛みの程度、痛みにともなう心理状態をそれぞれVAS(Visual Analog Scale)、HAD (Hospital Anxiety and Depression)テストで評価し、上記代謝物濃度との相関性について検討した。 神経障害性疼痛の患者では前帯状回において、NAA濃度が有意に低下し、Cho濃度が有意に上昇していた。また、前頭前野において、NAA濃度が低下傾向を示した。痛みの程度と前帯状回、前頭前野における上記代謝物濃度に相関性を認めなかったが、痛みにともなう抑うつや不安が強い患者では前帯状回におけるNAA濃度が低下する傾向が見られた。 CRPSの患者でも、前帯状回において、NAA濃度が低下し、Cho濃度が上昇していた。また痛みにともなう不安が強い患者では前帯状回におけるNAA濃度が低下する傾向が見られた。 慢性神経障害性疼痛患者、CRPS患者では、痛みの情動的側面に関与する神経機能の変調が、病態の成立に関与する可能性が示唆された。MRSを用いた局所脳機能評価は、脳内の痛覚処理機構の変化を評価する有用な方法になりうると考えられた。 H20年度は3TMRI装置による脳内のGABA濃度、抑制系ニューロンの機能変化の測定準備を整えた。
|