2009 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた慢性疼痛の高次脳機能評価法の確立
Project/Area Number |
20591826
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
福井 聖 Shiga University of Medical Science, 医学部, 講師 (80303783)
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Keywords | MR Spectroscopy / 前帶状回 / 前頭前野 / NAA / GABA / Glutamate / 慢性疼痛 / 局所脳神経機能 |
Research Abstract |
本研究は、MR Spectroscopyを用いて脳神経機能の指標であるN-アセチルアスパラギン酸(NAA)、抑制系ニューロンの指標であるガンマアミノ酪酸(GABA)濃度を前帯状回などで測定する方法を、慢性疼痛患者の高次脳機能レベルにおける痛みの評価法として確立することが目的である。 慢性神経障害性のなかでも、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の患者では、前帯状回、前頭前野など情動に関連する領域でNAA濃度が有意に低下しており、神経機能の低下を認める難治性の慢性疼痛患者では、神経ブロックを中心とした身体的アプローチによる症状の改善は困難であり、認知療法をはじめとする心理的なアプローチによる治療が重要なカギをにぎることを発表した。さらにCRPS患者では、痛みの情動的側面に関与する神経機能の変調が、病態の成立に関与する可能性が示唆されることを論文発表した。 3テスラのMRI装置による磁場強度の信号に伴い、良質のスペクトルが得られることが可能となり、MEGA-PRESS法で微量なGABAの測定が可能になったのみならず、興奮性シナプスの伝達物質であるグルタミン酸(glutamate)の測定濃度も飛躍的に向上し、MRSの質の向上を図ることができるようになった。これにより、MRSを用いた局所脳機能評価は、慢性疼痛の成立過程において、NAA濃度と抑制系ニューロンの指標であるGABA濃度のみならず、興奮性ニューロンの指標であるグルタミン酸濃度との関連を明らかにすることが可能になり、脳内の痛覚処理機構の変化を評価することにおいて、さらに有用な方法になりうると考えられた。 H21年度は3TMRI装置による脳内のNAA濃度、GABA濃度に加えて、興奮性ニューロンの指標であるグルタミン酸濃度の測定準備を整えた。
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