2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20591839
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
村川 雅洋 Fukushima Medical University, 医学部, 教授 (90182112)
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Keywords | 術後せん妄 / アセチルコリン / マイクロダイアリーシス / イソフルラン / 手術ストレス / ACTH |
Research Abstract |
術後せん妄は大手術後に意識混濁に加えて幻覚や錯覚がみられる状態で、人工呼吸用気管チューブや輸液用カテーテルの自己抜去などを引き起こし、手術患者の予後に重大な影響を与える合併症である。向精神薬や抗コリン剤の投与によって軽減されることが多いが、その神経化学的機序は明らかでなく、有効な治療手段が確立きれていない。本研究の目的は、全身麻酔による脳内神経伝達物質放出の変化のみならず、全身麻酔下に侵害刺激を加えた場合および麻酔覚醒後、さらに鎮静中の脳内神経伝達物質放出の経時的変化を検討することによって、術後せん妄の神経化学的発生機序を解明することである。 本年度は全身麻酔下に疼痛刺激を加えた場合の脳内神経伝達物質放出の変化を検討した。脳内マイクロダイアリーシス・高速液体クロマトグラフィーで大脳皮質のアセチルコリン放出量を測定し、全身麻酔薬イソフルラン吸入下のラットに腹部皮膚切開を行い、アセチルコリン放出量の変化を検討した。また、神経内分泌系のストレス反応を検討するため、同様のラットで、腹部回復刺激による血中ACTH濃度の変化を調べた。その結果、イソフルラン麻酔によって、アセチルコリン放出量は対照値の約25%に減少し、開腹刺激を与えても上昇しなかった。一方、ACTH濃度はイソフルラン麻酔下でも開腹刺激によって約10倍に増加した。 これらの結果は、たとえ全身麻酔中でも手術刺激によって神経内分泌反応は惹起されるが、大脳皮質の活動性は低下したままであることを示している。このような変化が術後もある程度持続するとすれば、神経回路網に複雑な影響を与え、術後せん妄の誘引となる可能性が示唆された。
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