Research Abstract |
選択的セロトニン(5-HT)取り込み阻害剤服用により睡眠時ブラキシズム(SB)頻度が上昇したという報告から,我々は,神経終末の5-HT濃度,すなわち神経終末の5-HT濃度調節を制御するトランスポーター(SERT)の機能の差異がSB発症に何らかの関与をしているという仮説を立てた。そこで本研究では,SB発症頻度と5-HT神経系のSERT機能との関連についてヒトを対象にcase-control studyにて検討を行った。 被験者は,本研究に自発的に参加の意思を示した健常者のうち,以下のスクリーニング基準ならびに適格基準を満たした者とした。すなわち,高頻度に睡眠時ブラキシズムを自覚する者,またはほとんど自覚しない者のうち,簡易ブラキシズム測定装置(BiteStrip^<[○!R]>)による連続3日間の測定結果が全てScore 2以上(重度ブラキシズム群)もしくは全てScore 1以下であったもの(軽度ブラキシズム群)とした。ただし,過去6ヶ月以内に中枢性向精神薬,抗うつ薬の服用,喫煙があったもの,実験期間中に飲酒,カフェインの摂食を中止できないものは対象から除外した。 これら被検者には,自宅にて3日間連続してブラキシズム測定装置にてブラキシズムレベルを測定させた。このブラキシズム頻度の測定の結果より,重度/軽度ブラキシズム群の適格基準を満たす者を最終被検者とした。 3日間のブラキシズム測定装置での計測により適格基準を満たした最終被検者は,最終測定日の翌朝(午前9時)の朝食を摂取する前に前腕より静脈血を採取した。この末梢血中の血小板上のSERT数,血小板数(ELIZA法)およびSERTの5-HT取り込み能([3H]RI assay)の計測,ならびに重度/軽度ブラキシズム群間で比較を行った(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科倫理委員会承認番号:967)。 被検者集積期間に適格基準を満たした重度ブラキシズム群13名(男性/女性:5/8名,平均年齢28.0+/-4.68歳),軽度ブラキシズム群7名(男性/女性;3/4名,平均年齢30.2+/-5.61歳)を最終被検者とした。 この2群間の男女比,年齢,総SERT数には有意な差は認められなかった(p=0.85;カイ二乗検定,0.64,0.46:t-検定)。しかし,SERTの5-HT取り込み能を総SERT数で除した値は,軽度ブラキシズム群が重度ブラキシズム群に比べ有意に高い結果となった(12.79+/-1.97,8.27+/-1.91 fmol/105 platelets/min,p<0.001,t-検定)。以上の結果より,睡眠時ブラキシズムの発症頻度にはSERT数の多寡ではなく,SERTの取り込み能の差異が関与している可能性が示唆された。
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