2009 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疼痛の診断・治療指標候補の一酸化窒素の神経可塑性変化における活性化機構
Project/Area Number |
20602012
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
阿部 哲也 Kansai Medical University, 医学部, 講師 (20411506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 伸治 関西医科大学, 医学部, 講師 (70276393)
福永 幹彦 関西医科大学, 医学部, 教授 (90257949)
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Keywords | 慢性疼痛 / 一酸化窒素 / 神経可塑性 / 脊髄 / 後根神経節 / グルタミン酸 / NMDA受容体 / マウス |
Research Abstract |
疼痛は慢性化するにつれて、その病態に心理的要因の占める割合が大きくなることが多くなるが、良好な治療を行うためには、器質的・機能的障害に心理社会的因子が関与した病態と考える心身症としての見立てが有効となってくるのであるが、そのためにも慢性疼痛患者の身体面での変化が解明される必要があり、これを研究目的としている。我々は一酸化窒素(NO)を指標候補として研究を遂行している。中枢神経系において、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の活性化はNMDA受容体の活性化と密接に関連しており、nNOSのシナプス下膜への移動はシナプスにおける効果的なNO生産の必要条件であることを明らかにしてきた。また、ATPも疼痛伝達に重要な働きをしていることが近年明らかにされてきた。しかし、nNOS活性をATPが活性化するかどうかは明らかではなかった。 われわれはnNOSに蛍光タンパク質であるYFPを標識にしたものをPC12細胞に発現しnNOSの細胞膜への移動を観察できる系を用いてATPがNMDAおよびフォルスコリン存在下でnNOSの細胞膜への移動を引き起こすことを見出した。ATP受容体のP2XおよびP2Yの作動薬や拮抗薬を用いた実験医より、いずれも細胞内カルシウム濃度の上昇が引き起こされ、nNOSの細胞膜への移動が引き起こされていることが明らかとなった。さらに、脊髄後角神経細胞でP2XやP2Yの作動薬が細胞内カルシウム濃度の上昇を引き起こすことを明らかにした。さらに、神経因性疼痛モデルマウスの脊髄においてP2X3,P2X2/3選択的阻害剤のA-317491がNO産生を阻害することを確認した。以上のことよりATPはP2XやP2Y受容体を活性化することによりnNOS細胞膜への移動を修飾し、nNOSをシナプス下膜へと移動させることがATPの脊髄後角における疼痛維持における働きであることを明らかにした。
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