Research Abstract |
本研究の目的は,特定の神経細胞の膜動態を得る為に,プロモータ部位に結合するタンパク質の濃度等の変数やパラメータをコントロールすることによって,遺伝子発現を制御しながら神経幹細胞を分化・誘導する為の技術を開発することである.この技術を細胞膜動態におけるリバース・エンジニアリング(RE)法とよぶ.その為に,本研究では,in silicoにおける大規模計算機によるシミュレーションとwetな実験系によるモデル検証を行なう.そして,どの時点の生化学反応が本質的に膜動態形成に最も重要であるかを明らかにする.特に,本研究課題では,神経幹細胞を誘導して,ドーパミン作動性細胞の膜動態を得るためのRE法の開発を行う.本年度は,ドーパミンの作用が比較的に明らかになっている線条体有棘細胞のドーパミン・シグナル伝達系の大規模分子ネットワークを例にして,そのネットワークを計算機上に構築した.そして,可塑性に関わる重要分子とその経路を探索する手法を提案した.また,特に,系の定常状態に着目して,シグナル伝達系の動力学系を単純な系に縮退させる方法を提案した.この手法は,シグナル伝達系に限らずに,一般の代謝系などにも適用できるために,複雑な分子ネットワークの本質的な部分を簡単な数理モデルで知ることが可能になった.今後は,これらをREの構築に応用する予定である.
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