Research Abstract |
本研究の最終的な目的は,地球温暖化などに伴う地域気候の『変化の兆候』について(東アジアを例に),科学的視点と感覚的視点を双方向に駆使して,いち早く把握出来る『眼』を滴養するための教育プログラム開発にある。本年度は,細かいステップで変化する季節の特徴やその変調としての異常気象(本研究での気象解析の成果も含む),及び,温暖化の昆虫への影響について(新たな調査も含む),教材化のための諸事例の検討を行なった。更に,それらを踏まえて,音楽や短歌,絵画の鑑賞や表現活動と連携した授業開発について検討し,研究授業の実践とその分析を行なった(H20年度に行った研究授業の分析も継続して行った)。 前年度までに既に開発した授業の実践とその結果の分析に関しては,春の季節変化の詳細と季節感を捉える授業(小学校),夏や冬の異常気象の実態を観測データから探求するとともに,短歌に詠まれた『時雨』に注目して秋から冬へ遷移を捉える授業(岡大附中),について論文にまとめた。 更に,この中学校で行った授業をベースに更に検討した授業(岡山-宮高),唱歌『朧月夜』で歌われる内容とも連携させながら,春に卓越する日々の気象の詳細やそこまでの季節経渦の履歴を捉える授業(倉敷市立西中),音楽作品や絵画に表現されている季節現象を詳細に感じ取るとともに,自ら『音』や『色』で表現する活動に関する授業(『中間の季節』も意識)(岡大・教育学部),についても実践・分析を行った。これらについては,H22年度も更に継続して分析するとともに,それを踏まえて新たな提案授業を開発予定である。 また,温暖化に関連するミナミアオカメムシの分布北上の実態,タマバエ類の発生期と寄主植物フェノロジーの同時性のずれ,ブナ林の衰退によるブナタマバエ類の種多様性の低下などについて,研究成果を発表するとともに,「地球温暖化と昆虫」を上梓した。また,韓国南部で日本からのタマバエ類や害虫類の侵入に関する調査を行ったが,タマバエでは日本と共通種が見られたものの,ミナミアオカメムシなど重要害虫は侵入していなかった。このように,『地球温暖化と地域気候の変化』を,昆虫の切り口を通してみる授業の素材が蓄積出来た。
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