2009 Fiscal Year Annual Research Report
なつかしさの起源を探る:認知心理学・脳科学的記憶研究からのアプローチ
Project/Area Number |
20653052
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 潤 Nagoya University, 環境学研究科, 教授 (70152931)
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Keywords | ノスタルジア / エピソード記憶 / 感情 / 自伝的記憶 / 脳神経科学 / 音楽 / マーケティング / なつかしさ |
Research Abstract |
人は,日常場面において,過去の体験を思い起こしたり、過去に流行した事柄と出会うと,単に過去の記憶を想起するだけでなく,「なつかしさ」と言う言葉で表現できるような、単なる快感情・不快感情とは異なる,複雑な感情を伴った心的状態におちいることがある.本研究はこの点について,以下の側面から検討しようとするものである. ・このような「なつかしさ」はどのような心的過程を経て生まれてくるのであろうか ・人が「なつかしさ」を感じるという仕組みにどのような認知的意味があるのであろうか ・記憶の機能が深く関わっていることは確かであるが,記憶の進化から考えて「なつかしさ」どのような働きをしているのであろうか. 本年度は,以下の点について検討を進めた. 1)なつかしさ(nostalgia)喚起刺激の作成:「なつかしさ」生起の時間的側面に着目して 過去約15年にわたるヒット曲を230曲用意し,そのなつかしさ強度,個人的出来事の想起しやすさなどを検討した.その結果,過去への時間的距離が長くなるにつれてなつかしさ強度が増すことや,個人的出来事の想起しやすさとなつかしさ強度は正の相関を持つことが明らかとなった. 2)なつかしさ感情生起の神経基盤に関する実験的検討 作成した音楽刺激を元に,なつかしさ感情生起の際にどのような脳活動が生じているかを明らかにするために,fMRI実験を実施した.脳活動データは現在解析中であるが,fMRI装置内でも十分になつかしさ感情生起が可能であることが明らかとなった.次年度に向けて詳細な分析を進めているところである. 現時点までの研究成果について,2009年日本心理学会において,「ノスタルジア研究の現在:基礎的側面と応用的アプローチ」というワークショップを主催し,マーケティング・広告研究からの知見の報告も含め,基礎・応用両面から検討を行った.
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Research Products
(1 results)