Research Abstract |
この課題では,建築基準法のような日本語で書かれた建築基準をコンピュータプログラムに変換し,CADで設計された建物がこれらの建築基準を満たしているかを判定する手法について研究している。 初年度である平成20年度には,まず,自然言語処理を扱うための環境を整備した。形態素解析ソフト,係り受け解析ソフト,およびその他のユーティリティソフトを導入した。形態素解析に必要な建築用語辞書は他の研究者から譲り受けたものを変換し,また新たに入力して作成した。これらのソフトによって,日本語で書かれた文章の構造を自動的に解析することができる。 建築基準法の内容をコンピュータプログラムに変換するシステムについては,個々の建築基準法の条文から,これが,何について,どうしなければならないと言っているのかを取り出すプログラムを試作した。条文を自然言語処理ソフトに入力してみたところ,完璧に正しい係り受け関係が出力されるとは限らなかったため,手作業で修正するためのプログラムを補足的に作成した。今後,解析で得られた主語,述語,修飾語句等を使って,条文の適合判定を行うコンピュータプログラムに変換する予定である。適合判定プログラムを適用させる相手として建物情報モデル(いわゆるBIM)を想定しているが,広く利用されているBIMツールの中から一つの製品を採用し,操作,機能拡張用のAPIを把握した。併せて,BIMの普及を図るための講習会に多数参加し,設計現場での利用状況を把握した。 こうした情報収集の中で得た知見をもとに,BIMの新しい利用方法として,設計内容を判断して技術文書をデータベースから自動的に検索するシステムを提案した。これは直接的には当初の目標に入っていなかったが,研究過程で派生したものである。このアイデアを日本建築学会の技術報告集に投稿し,採用が決定している。
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