2008 Fiscal Year Annual Research Report
社会・風俗史的背景からみた日本近世建築彫刻の意匠論的研究
Project/Area Number |
20656099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
黒田 龍二 Kobe University, 工学研究科, 准教授 (40183800)
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Keywords | 中国神仙彫刻 / 土佐神社 / 潮江天満宮 / 久能山東照宮 / 帝釈天題経寺 |
Research Abstract |
本年度は、中国神仙彫刻があることが分かっている、ないし推測される土佐神社(高知県高知市)、潮江天満宮(同)、久能山東照宮(静岡県静岡市)、帝釈天題経寺(東京都葛飾区)などを調査した。これらに関しては、人物彫刻すべての写真撮影ないし、それが不可能な場合は、それに代わる史料を入手ないし作成した。 土佐神社本殿は元亀二年(1571)の建立でこの種の彫刻を持つ建築物としては最初期の事例であることが確認できた。久能山東照宮は、元和3年(1617)の建立で江戸初期の優作である。人物彫刻の数は多くはないが、珍しい画題のものがある。 高知市の潮江天満宮楼門は、明治20年(1887)の建立で豊富な人物彫刻を配置している。ここの彫刻は大きくて、劇的な表現をもち、彫技も優れている。一方、柴又帝釈天の内殿には、本殿壁面を埋め尽くす説話彫刻がある。これは法華経を主題としたもので、事例としては非常に珍しい。建物は大正四年(1915)の建立である。 説話彫刻、人物彫刻は、祭礼で使用される屋台に関しては、現在も作られている。また欄間彫刻、仏壇彫刻も現在作られている。近年の建築物の状況は不明であるが、おねらく潮江天満宮楼門、柴又帝釈天内殿の彫刻は、彫刻桃山時代に始まる人物彫刻の最終的な帰結の代表的なものと見られる。 室町時代から江戸時代の絵画の画題との関連に関しては、本年はいくつかの文献資料の収集にとどまっているので、次年度はより広い範囲で收集し、あわせて考察を行こととする。
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