2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世の浄土信仰とその建築造形-密教の影響をめぐって-
Project/Area Number |
20656100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
冨島 義幸 The University of Shiga Prefecture, 環境科学部, 准教授 (80319037)
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Keywords | 浄土信仰 / 密教 / 阿弥陀堂 / 建築造形 / 中世 |
Research Abstract |
古代・中世の浄土信仰にもとづく建築のなかでも、本年度はとくに平等院鳳凰堂・三千院本堂という阿弥陀堂を中心に、空間構成理念について調査・研究をおこなった。成果は以下のとおりである。 1.阿弥陀如来像の大日光背:平安後期になると、鳳凰堂をはじめ阿弥陀堂の本尊である阿弥陀如来像の光背に、密教の大日如来像を付ける事例が多く認められる。こうした大日光背の阿弥陀如来像を現存する作品と文献史料に求め、その成立過程と意味について検討した。阿弥陀如来像の大日光背は、阿弥陀法本尊が五智宝冠阿弥陀から螺髪阿弥陀に移行していくなか、院と真言密教の接点である勝光明院阿弥陀堂で、五智宝冠に代わるものとして、平安初期の密教像を参照しつつ成立したことを論じ、それが両界曼荼羅を基盤とする顕密仏教の阿弥陀信仰を体現するものと結論づけた。 2.三千院本堂の天井画諸尊の構成:三千院本堂の天井画を赤外線カメラによって撮影し、そこに描かれた諸尊を分析した。結果、阿弥陀二十五菩薩と金剛界曼荼羅の諸菩薩からなる、天井画諸尊の具体的な配置構成が明らかになった。とくに後者については、左右で金剛界曼荼羅を南北にわけており、現在、南面している本堂は創建当初、来迎の本尊阿弥陀三尊像が西方から向かってくる造形にふさわしく、東面していたことを論じた。 3.阿弥陀曼荼羅として阿弥陀堂:上記の三千院本堂の調査結果に、平等院鳳凰堂の空間について分析を加え、これらの阿弥陀堂の空間が九品曼荼羅という、密教の阿弥陀曼荼羅にもとついて構成されていることを明らかにした。さらに、これらの阿弥陀堂と密教修法である阿弥陀法の関係を明らかにし、その建築空間全体が密教の阿弥陀法の本尊たる阿弥陀曼荼羅であることを示した。
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Research Products
(6 results)