2009 Fiscal Year Annual Research Report
中世の浄土信仰とその建築造形―密教の影響をめぐって―
Project/Area Number |
20656100
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
冨島 義幸 The University of Shiga Prefecture, 環境科学部, 准教授 (80319037)
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Keywords | 浄土 / 密教 / 平等院鳳凰堂 / 観無量寿経 / 大日如来 / 阿弥陀如来 / 曼荼羅 / 阿弥陀堂 |
Research Abstract |
古代・中世の浄土信仰にもとづく建築のなかでも、本年度はとくに平等院鳳凰堂を中心に、空間構成理念について調査・研究をおこなった。おもな成果は以下のとおりである。 1. 大日光背の広がりの検討:昨年度の阿弥陀如来像の大日光背の検討にひきつづき、大日光背の阿弥陀如来像以外への広がりを検討した。結果、大日光背は、阿弥陀をはじめ釈迦・薬師・弥勒など顕教像にも数多く存在したことが明らかになり、その意味は大日如来を中心とした顕密融合の両界曼茶羅という、中世のコスモロジーを表明するものと考えた。そのうえで阿弥陀如来像の大日光背は、顕密からなる平安時代の阿弥陀信仰の実態を示すものと結論づけた。その成果は「大日光背の展開と中世仏教的世界観」として発表した。 2. 鳳凰堂仏後壁背面画の調査・検討:鳳凰堂の仏後壁背面には、通説では『観無量寿経』に説かれる九品往生のうちの下品下生と中品下生がならべて描かれているとされてきた。今回、壁画の残存部分を赤外線カメラで撮影し、そこに描かれた図様の詳細を確認した。結果、ここに中品下生の存在を示すような図様は確認できず、鳳凰堂全体の空間構成からも下品下生のみが描かれていると考えるのが妥当と結論付けた。本研究の成果は『鳳飛学叢』6号に掲載予定である。 3. 鳳凰堂の空間構成の総括:昨年度、鳳凰堂は密教の阿弥陀法のための阿弥陀曼茶羅として構成されていたことを明らかにした。この成果と本年度の上記2の成果を、『観無量寿経』にもとづく観想のための空間という通説とあわせ、鳳凰堂が顕密の諸行によって極楽往生を祈るための空間と総括した。そして、浄土教芸術の代表作とされる鳳凰堂に密教の本質的な影響がある以上、従来の建築史学や美術史学が採用してきた、浄土教を中心とする平安時代の造形論を見直す必要があると指摘した。その成果は『平等院鳳凰堂-現世と浄土のあいだ-』として出版した。
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Research Products
(7 results)