2009 Fiscal Year Annual Research Report
大型類人猿における自己と他者の理解およびその相互連関に関する比較研究
Project/Area Number |
20680015
|
Research Institution | Hayashibara Biochemical Laboratories, Inc. Great Ape. Research Institute |
Principal Investigator |
平田 聡 Hayashibara Biochemical Laboratories, Inc. Great Ape. Research Institute, 心理・行動学研究部, 研究員 (80396225)
|
Keywords | 大型類人猿 / 協力 / 顔認知 / 意図の理解 / 自己認識 |
Research Abstract |
遅延自己像の認知に関して、類人猿研究センターのチンパンジーを対象として、前年度までにおこなった実験の結果を解析した。被験者となった5個体のチンパンジーのうち3個体で遅延自己像の認識に関して肯定的な結果が得られた。さらにそのうち2個体では、時間軸を通して固有の自己に対する自己認識が成立していることを統計的に裏付けるデータが得られた。チンパンジーの自己理解が「今ここ」の世界だけでなく、過去の自己も自己と認識し、さらに過去の自己と他者を区別することができることを示す結果である。続いて、協力行動に関する実験結果を総合的に考察した。チンパンジーも、実験的状況において、試行錯誤により他者と協力することを学習することができるが、その際に協力相手と意図性の共有を示す証拠は認められず、この点においてヒトと最も顕著に違うことが示唆された。また、視線運動を計測する手法を用いていくつかの新たな実験研究をおこなった。その結果、他者の顔認知に関してはチンパンジーもヒト同様の全体処理をおこなっていること、他者の顔とそれに対応する音声といったような画像と音声の視聴覚統合がチンパンジーはヒトに比べて弱いこと、眼前に存在している事物に対しての予測はチンパンジーとヒトで変わりないが、直接目に見えない意図を元に行為を予測することはチンパンジーにとっては難しいことが明らかとなった。自己認識に関する実験結果と他者理解に関する実験結果を個体ごとに照合すると、両者が相互に強く関連していることを窺わせる予備分析結果が得られた。
|