Research Abstract |
平成20年度においては, "災害対応ナレッジデータベース(Knowledge Database for Disaster Management : KDDM)"の基礎データとなる「災害対応からの教訓と知恵」の収集・整理を実施した. 具体的には, 「平成18年7月豪雨」(鹿児島県川内川流域, 2006年)の主要な災害対応者である行政(国土交通省中部地方整備局川内川河川事務所, 同局鶴田ダム管理事務所, 鹿児島県さつま町)のそれぞれ各部局, 県建設協会長や自治会長を対象として, インタビュー調査を実施し, 当時の詳細な災害対応経験をビデオ映像, 音声及びテープ起こしによる文字情報データとして整理した. 調査内容は, 各災害対応者が遭遇した状況を発災時から時系列に聞き取り, 中でも混乱に対する状況判断や対応行動について, 災害発生後の時間に即してオープン(非構造型)インタビューを行った. また, 東海豪雨水害(愛知県名古屋市, 2000年), 平成20年8月末豪雨(愛知県岡崎市, 2008年), 浅野川氾濫豪雨(石川県金沢市, 2008年)についても, 行政及び自治会等に対する同様の調査を行った. その結果, 気候変動に伴う水害リスクの増大によって, 「自然外力が既存施設の計画容量を超え, 十分な機能が果たせなくなる. 予測し得ない急激な水位上昇に対して, 的確な避難指示が出せなくなる」といった従来の治水政策の限界を超えるシナリオを想定した新たな治水政策への転換の必要性を示唆した. その上で, 従来のハード整備や避難体制の強化のみならず, 応急から復旧・復興までの災害プロセスを記録・共有し, 自助・共助・公助の役割を明確にし, 新たな治水計画として盛り込むべき具体的な課題を提示した.
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