2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポリペプチド翻訳合成:D体アミノ酸とベータアミノ酸への新展開
Project/Area Number |
20681022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 裕 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (10361669)
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Keywords | D-アミノ酸 / ベータアミノ酸 / 非蛋白質性アミノ酸 / 翻訳 |
Research Abstract |
本研究課題では、翻訳系を用いてD体アミノ酸やベータアミノ酸を含むペプチドの合成を可能にすることを目的としている。これまで、D体アミノ酸やベータアミノ酸は、翻訳系に受容されないと考えられてきた。しかしながら過去のD体アミノ酸やベータアミノ酸に関する報告では、(1) アミノアシルtRNAの一部がデオキシ型、(2) 非蛋白質性アミノ酸の導入にアンバーコドンなど限られたコドンのみを使用、(3) D体のアミノアシルtRNAを加水分解する酵素が混在している、などの問題点があった。昨年度は(1) の問題点を解決することで、効率的にアミノアシルtRNAが合成できるようになった。本年度は、合成したアシルtRNAと精製した大腸菌の翻訳因子を組み合わせ"フレキシブル無細胞翻訳系"を構築した。これにより遺伝暗号のリプログラミングが可能となり様々なコドンが使用できるようになるため、(2) の問題点が克服された。また余計な酵素の混入のない翻訳系で実験が行えるため、(3) の問題点を避けることができる。翻訳系にはMKKKX-Flag(XはD体アミノ酸)をコードするDNAを加え、転写翻訳共役系で反応を行った。Xに対応するコドンとしては終止コドンではなく、Serに対応するコドン(ただしSerは翻訳系に加えていないので空コドンとなっている)を用いた。そのため、加えたアシルtRNAがこのコドンを読み、D体アミノ酸が導入されたときのみペプチドが合成される。電気泳動と質量分析計を用いた解析の結果、驚くべきことに、19種類のD体アミノ酸のうち6種類が効率よくペプチドに導入された。さらにTricine SDS-PAGEを用いて、D体アミノ酸とL体アミノ酸を導入したペプチドを比べると移動度に明らかな差があった。これは翻訳系で合成されたペプチドに、D体アミノ酸が導入されていることを示している。来年度は、複数のD体アミノ酸のペプチドへの導入を試みると共に、ベータアミノ酸についても研究を進める計画である。
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Research Products
(3 results)