2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20684001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤野 修 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60324711)
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Keywords | 極小モデル / トーリック幾何 / アバンダンス予想 / 消滅定理 / フリップ |
Research Abstract |
今年は極小モデル理論の基本定理について様々な考察を行った。その結果、従来の議論より簡単で遥かに強力な論法を編み出すことに成功した。極小モデル理論が始まった頃からの長年の問題であった基本定理の対数的標準化を完成させたのである。結果は論文としてまとめ、現在投稿中である。また、この新しい論法を駆使することにより、曲面の極小モデル理論についても新しい結果を得ることに成功した。この結果は専門家が想像していたより遥かに良い結果だと自負している。これについても既に論文を執筆し、プレプリントとして配布済みである。この2つの仕事が極小モデル理論に関するものである。 東京大学の大学院生の権業さんとファノ多様体について共同研究を行った。この共同研究は全く予定外の研究であった。1~2ヶ月の電子メールを中心とした議論で共著論文を一つ書き上げることに成功した。弱ファノ多様体の性質について調べただけでなく、ファノ多様体についてのよく知られた結果の別証明を得るなど、有意義な共同研究であったと思う。共同研究によって興味の対象が確実に広がったのは喜ばしい副産物である。 上で述べた部分は、おそらく1年前に考えていた以上の成果である。研究は順調である。予定通りに進まなかった部分としては、本の原稿の執筆と予定外の海外出張キャンセルがあげられる。オランダ出張が豚インフルエンザ(その当時はこのように呼ばれていた)で不可能になったのは残念であった。国際的な会議で招待講演者という絶好のアピールの場を、大学の過剰な反応で棒に振ってしまった形になった。本の原稿の執筆の遅れは、さらに重要と思われる他の論文の執筆を優先した結果なので、特に問題は生じていないと思う。来年度中の完成を目指したい。
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