2009 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマプロセスの制御によるアモルファス炭素膜の揺らぎのない成膜プロセスの創成
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20684027
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
篠原 正典 Nagasaki University, 生産科学研究科, 助教 (80346931)
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Keywords | 反応性プラズマ / アモルファス炭素膜 / プラズマプロセス / 多重内部反射赤外分光 / 成長過程 / アセチレン / 付加反応 |
Research Abstract |
アモルファス炭素膜は、炭素を主な要素として構成されるアモルファス状の炭素膜であり、すでに広く産業界で用いられている。しかしながら、膜中のわずかな組成や結合状態の変化により膜質は大きくかわってくる。所望の膜質を得るために、膜中の組成や結合状態を揺るぎなく制御しなければならない。そのためには、膜がどのように形成されていくのかという成膜メカニズムを理解して、成長を行うことが必要である。さらにプラズマプロセスは時々刻々変化するので、アモルファス炭素膜の成膜に伴って、プラズマ自体も変化させなければならない可能性もある。様々な要素に対して、科学的見地に基づき、膜の堆積プロセスを制御する方法を確立することが必要である。しかしながら、プラズマ中のプロセスを観察するというのは非常に難しくプラズマプロセスを観察した上で制御するという研究は進んでいない。そこで、申請者はプラズマ中でも「その場」「実時間」観測が可能な多重内部反射赤外分光法を立ち上げ、成膜メカニズムの理解に焦点を当て研究を進めている。 昨年度に引き続き、広く産業界でも使われているメタンを原料としてプラズマCVD法を用いて膜を成長させるプロセスを調べた。さらに、本年度は、成長速度の増大などの利点を持つアセチレンを原料として用いたプラズマCVD成長過程についても調べ詳細に解析を行った。その結果、アセチレンを原料としたプラズマCVDでは、原料から解離した化学種が表面に吸着した後、その吸着した化学種にさらに「付加反応」によりプラズマで生成された化学種が吸着することをが、明らかにできた。メタンを原料とした際には膜の堆積には膜表面の水素の引き抜きが化学種の吸着には必要であると考えられているのに対して、この反応には、表面水素の引き抜きが必要なく、プラズマから供給される化学種が吸着でき、アセチレンを原料とした場合堆積速度が増大することが明らかにできた。さらに、基板バイアスを印加すると、プラズマ中のラジカル成分に加えイオン成分も引き込まれ、この付加反応で形成されるポリマー状の成分をエッチングされ、さらに膜中のC-C結合が増加することより、炭素の結合の密度が増大することが分った。これらの結果は、プラズマCVDプロセスに科学的に捉えたものであり、その意義はたいへん大きい。
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Research Products
(12 results)