2010 Fiscal Year Annual Research Report
フォトニック結晶とサブバンド間遷移の融合による熱輻射制御の研究
Project/Area Number |
20686007
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 卓 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30332729)
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Keywords | フォトニック結晶 / サブバンド間遷移 / 熱輻射 / 黒体輻射 / ランジュバン方程式 / スペクトル制御 / 放射角制御 / TM-PBG |
Research Abstract |
本年度はデバイス構造の最適化と電流注入デバイスの実現、そして放射パターンの測定を行うことを目指して研究を行った。 1.電流注入による発光を実現するべく、昨年度実現したサブバンド間遷移を示す量子井戸ウエハにフォトニック結晶スラブ(2.4mm角、厚さ1.8μm)を形成したチップ(3mm角)の枠部分に2カ所の電極を形成し、2本の金属ワイヤーを用いてチップを空中につり下げる構造のデバイスを作製した。金属ワイヤーを細長くして熱伝導損失を抑制し、またデバイス周辺を真空にして対流による損失を抑制した。またスラブを支える枠部分および電極部分を小さくして余分な輻射損失を低減した。これにより、同一注入電力において同様の構造の疑似黒体試料の2倍のピーク輻射強度を示す狭帯域(中心光子エネルギー128meV、線幅4.5meV)の熱輻射光源の実現に成功した。 2.(1)のデバイスの放射角度特性を測定するため、集光角の小さなレンズ(~10°)を用いてFTIR分光器に発光を取り込む光学系を構築し、デバイスの角度を変えながら発光スペクトルを測定した。その結果、デバイスからの熱輻射がフォトニック結晶のバンド構造を反映していることを観測することに成功した。また輻射ピーク強度の角度依存性を評価したところ、強度が半分になる角度全幅が22°と非常に狭いことが分かった。つまり、不必要な方向への熱輻射を抑制できていることが確認できた。 3.別種のフォトニック結晶構造の可能性を探るため、サブバンド間遷移の偏光方向であるTM偏光モードに対してバンドギャップの開く三層積層型のフォトニック結晶を検討し、その作製に成功した。 以上、本研究では3年間の成果として当初の目標であった電流注入型の狭帯域、狭出射角の高効率な熱輻射光源を実現することに成功した。
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