2010 Fiscal Year Annual Research Report
酸素漂白条件下における多糖類およびリグニン分解機構の基礎的解析
Project/Area Number |
20688007
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 朝哉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (10359573)
|
Keywords | 酸素 / 漂白 / 木材化学 / 炭水化物 / 多糖類 / 活性酸素種 / 速度論的同位体効果 / リグニン |
Research Abstract |
酸素漂白過程において問題となる多糖類の分解は、主としてリグニン中のフェノール性部位と酸素との反応によって生成する活性酸素種(AOS)によって引き起こされる。このAOSの反応を機構的に解明するのが、本研究の目的である。これまでに、多糖類のモデル化合物であるメチルβ-D-グルコピラノシド(MGP)と、MGPのアノマー位またはC-2位水素を重水素に置換した化合物を酸素漂白条件下でAOSと反応させ、AOSとMGPのアノマー位およびC-2位水素との反応性を調べた。その結果、酸素と反応してAOS生成源となるフェノール性化合物として2,4,6-トリメチルフェノール(TMPh)を使用した場合には速度論的同位体効果が観測され、AOSによってアノマー位およびC-2位水素が引き抜かれることが確認されたが、フェノール性化合物として4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジルアルコール(Valc)を使用した場合にはこれが観測されず、これら二つの水素の引き抜きが確認されなかった。本年度は、AOSがMGPのどの水素と優先的に反応するのかについてより詳細に検討するため、MGPとMGPの炭素に結合する全ての水素を重水素に置換した化合物を酸素漂白条件下でAOSと反応させ、速度論的同位体効果の発現について詳しく調べた。その結果、フェノール性化合物としてTMPhとValcのどちらを使用し場合でも、速度論的同位体効果が観測され、これらから生成するAOSがMGPの水素を引き抜くことが確認された。この結果とこれまでに得られた結果から、TMPhとValcから生成するAOSは全く同じ組成ではなく、少なくともValcからは生成せずにTMPhからのみ生成する化学種が存在し、これがMGPのアノマー位とC-2位水素を引き抜くことが確認された。
|