2008 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌幹細胞及び癌幹細胞ニッチ相互作用を標的とした新規膵癌治療戦略の確立
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20689026
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大内田 研宙 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 特任助教 (20452708)
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Keywords | 癌幹細胞 / 膵癌 / ニッチ / 膵星細胞 / CD133 / 定量的RT-PCR / CD24 / 間質細胞 |
Research Abstract |
1.膵癌幹細胞を含むと期待されるCD133陽性細胞、CD24陽性細胞を分取し、その特性を調べた。CD133陽性膵癌細胞株はCD133陰性膵癌細胞株と比べ浮遊条件での細胞増殖能が高いものの、in vivoで腫瘍形成性に違いを認めず、CD133分画内にstem cellの存在を肯定する結果は認めなかった。また、CD24陽性細胞は分取後2日目よりCD24陰性細胞の発生を認め、またCD24陰性細胞からもCD24陽性細胞が発生した。両者のpllenotypeは容易に移行するため、CD24は癌幹細胞のマーカーとは考えにくく細胞の生物学的活動により発現が調節されている分子と思われた。 2. CD133陽性膵癌細胞株は線維芽細胞との共培養でCD133陰性膵癌細胞株に比し浸潤能が有意に高まることを発見した。さらにそのメカニズムとしてCXCR4-SDF1系の関与を同定した。これは、従来癌幹細胞と考えられていた細胞集団が、周囲微小環境から影響を受けることで悪性の特徴を促進することを意味する。 3. さらに、膵癌の浸潤を有意に増加させる特定の間質細胞を同定した。膵癌組織より樹立した膵)星細胞は1%〜17%の複数のある特定の表面マーカーを発現する膵星細胞を含み、マーカー陽性膵星細胞はマーカー陰性膵星細胞に比し有意に膵癌細胞株の浸潤を増加させた。これは、癌幹細胞を支持する周囲間質細胞(ニッチ)を同定するという当初の本研究の目的とは外れるが、膵癌細胞のprogressionを促進させる特定の間質細胞を同定できたことで、特異的周囲間質細胞をターゲットとした新規治療への道を開いた。これは既存の治療とまったく異なる膵癌治療の標的を見出したという点において、意義は大きい。また、定量的RT-PCRにて膵癌組織の複数のある特定の表面マーカー発現が高い膵癌患者は著しく予後不良であることが判明した。これはこの複数のマーカー陽性膵星細胞が膵癌の悪性化へ関与していることを意味する。
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