Research Abstract |
平成21年度は数理計画問題のうち以下3点に関する研究を遂行した。第一に,線形計画問題を解く効率の良いピボットアルゴリズムの提案を目指す理論的アプローチの土台として,ピボットグラフが満たす既存の3条件に加え,新たな条件としてシェリング条件を提案すると共に(Avis and Moriyama, CRM-Proceedings掲載),既存3条件にはないシェリング条件の有用性を示した(Avis, Miyata and Moriyama, the 6th Japanese-Hungarian Symposiumにて発表)。 第二に,線形計画問題の組合せ的抽象化である有向マトロイド計画問題を効率良く解けるか否かを判定することを目指し,判定する上で重要となる有向マトロイドの実現可能性判定問題に取り組み,以下3つの成果を得た。1つ目は,線形計画問題におけるピポットグラフが満たす必要条件として知られるHolt-Klee条件を用いて,有向マトロイドの実現不可能性を与える十分条件を提案し,実際に有向マトロイドデータベースを用いて,提案した2つの十分条件の有用性を示したことである(Fukuda,Moriyama and Okamoto,European Journal of Combinatorics掲載)。2つ目は,有向マトロイドの実現不可能性を示す十分条件として知られていたnon-Euclidean性とBFP性の間に,一様な有向マトロイドにおいて包含関係があることが知られていたが,同じ包含関係が非一様な場合にも成立することを証明したことである(Fukuda,Moriyama and Nakayama,Combinatorica掲載)。3つ目は,有向マトロイドの実現可能性を与える十分条件を初めて半正定値計画問題として定式化したことである(Miyata,Moriyama and lmai,Pacific Journal of Optimization掲載)。 第三に,上記で有向マトロイドの実現不可能性の十分条件としても用いた半正定値計画問題の有用性を示すべく,同計画問題の量子情報への適用を試みた。古典情報理論と量子情報理論の根本的な差を示す指標としてベル不等式の破れが知られる。両情報理論の違いを明らかにする上で,破れの最大値を計算することが重要となる。そこで,破れの計算を半正定値計画問題として定式化した【Avis,Imai,Ito(2006)】の研究を元に,破れの最大値計算に内在する数理構造を解析した(Avis,Moriyama and Owari,IEICE transactions on lnformation and Systems掲載;Moriyama,量子エレクトロニクス研究会にて発表)。
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