Research Abstract |
最終年度となる本年度は,スパースサンプリング理論を用いた画像特徴量抽出,特に直線エッジの正確な抽出に関する研究に取り組んだ.直線エッジ抽出の標準的な手法であるハブ変換には,精度の原理的限界や計算速度の遅さなど,多くの問題点がある.これらの問題点を解決する為に,スパースサンプリングの手法を用いて,雑音の無い画像から直線エッジを正確に抽出できる手法が提案されている.しかし,この方法では点広がり関数(PSF)のモデル化にB-spline関数を用いており,画像に雑音が含まれている場合にはそれに敏感に反応してしまうという問題点があった.そこで本年度の研究では,PSFのモデル化にTrigonometric E-splineと呼ばれる関数を用いることにより,雑音に対してより頑健な性能を有する直線エッジ抽出手法を開発した.Trigonometric E-spline関数は,三角多項式を表現でき,かつコンパクトサポートをもつ関数であり,B-splineに類似した形状を表現できる.提案手法は,画像に雑音が含まれない場合には,従来手法と同様に直線エッジの表現パラメータである振幅,方向角,切片を正確に求めることができる.そして,画素に雑音が含まれている場合には,B-splineを用いた従来手法に比べて,信号対雑音比が10dBであるときに,方向角は1.86dB,切片は9.64dB改善されることを計算機実験により示した.また,Canny法を前処理として用いることにより,局所的な直線エッジを抽出可能であることを示した.この成果を超解像処理に適用することにより,雑音に対して頑健な処理を行えることを示した.なお,この研究を集中的に遂行する為に,当該分野の先行研究を発表していたImperial College LondonのPier-Luigi Dragotti准教授の研究室に3ヶ月の滞在を実施した.
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