2008 Fiscal Year Annual Research Report
受容体ダイナミクスとカルシウムシグナルによる神経制御機構あるいは病態の解明
Project/Area Number |
20700300
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
坂内 博子 The Institute of Physical and Chemical Research, 発生神経生物研究チーム, 基礎科学特別研究員 (40332340)
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Keywords | 抑制性シナプス / カルシウム / GABA_A受容体 / 1分子イメージング / 量子ドット / シナプス可塑性 |
Research Abstract |
神経伝達物質受容体は,細胞膜上を側方拡散することによりダイナミックにシナプス内外を行き来している.このシナプス内外の受容体のやり取り及びシナプスにおける受容体の安定化は,シナプス伝達効率を決定する重要ファクターの1つであり,記憶学習の細胞レベル基礎過程である「シナプス可塑性」の分子基盤であると考えられている.「量子ドット1分子イメージング」は,細胞膜上の分子動態を解析するための強力なツールである.我々はこの手法を利用して,中枢神経系において抑制性神経伝達を担うGABA_A受容体の細胞膜上のダイナミクスを解析した.本研究では,海馬初代培養ニューロンのGABA_A受容体ダイナミクスが神経活動状態により変化することを明らかにした.量子ドットで標識されたGABA_A受容体γ2サブユニットの動態を解析したところ,興奮性神経活動の増加に伴いGABA_A受容体のシナプスでの滞在時間が減少することがわかった.また,シナプスにおけるGABA_A受容体の拡散係数と,受容体が拡散できる領域の大きさも,神経活動依存的に増加することが明らかになった.上記の結果は,興奮性神経活動の増加がシナプスのGABA_A受容体を不安定化することを示している.神経活動依存的なGABA_A受容体ダイナミクス制御は,GABA作動性シナプズ可塑性と同じく,カルシウム流入とcalcineurin活性を必要とした.本研究の結果は,GABA_A受容体ダイナミクス制御が,速やかで可塑的な抑制性シナプス伝達効率の調節に直接関与している可能性を示唆している.
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