2009 Fiscal Year Annual Research Report
受容体ダイナミクスとカルシウムシグナルによる神経制御機構あるいは病態の解明
Project/Area Number |
20700300
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
坂内 博子 The Institute of Physical and Chemical Research, 発生神経生物研究チーム, 基礎科学特別研究員 (40332340)
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Keywords | 抑制性シナプス / カルシウム / GABA_A受容体 / 1分子イメージング / 量子ドット / シナプス可塑性 |
Research Abstract |
神経伝達物質受容体は,細胞膜上を側方拡散することによりダイナミックにシナプス内外を出入りしている.受容体の側方拡散はシナプス伝達効率を決定する重要ファクターの1つであり,記憶学習の細胞レベル基礎過程である「シナプス可塑性」の分子基盤であると予想されているが,この仮説は実際に証明されてはいなかった.我々は,抑制性神経伝達をつかさどるGABA_A受容体に注目して,GABA作動性シナプス伝達効率を制御する分子機構の解明に取り組んできた。量子ドット1分子イメージング法を用いて細胞膜上のGABA_A受容体の動きを1分子レベルで追跡したところ,興奮性神経活動の増加に伴って受容体の側方拡散が増加し,シナプス後膜における受容体の安定性が著しく減少していた.このときシナプス内のGABA_A受容体数は減少するのに対し,細胞膜上のGABA_A受容体の総数は変化していなかった.この結果は,神経の興奮が高まると細胞膜上側方拡散が元進しGABA_A受容体がシナプス内に留まることができなくなったことにより,シナプス後膜の受容体数が減少することを示唆している。さらに,細胞内カルシウム濃度の上昇によるカルシニュリンの活性化が,受容体の側方拡散を増加させることも証明した.これまで,シナプス伝達効率を決める鍵となっているシナプス内の受容体数は,細胞膜上の受容体総数に比例して増減すると考えられてきた.今回の発見は,シナプス伝達効率決定機構に対し,「側方拡散制御による受容体数の増減」という新しい分子機構を提唱するものである.また,ノックアウトマウスと特異的な阻害剤を用いた実験から,細胞内小胞体カルシウムチャネルIP_3受容体からのカルシウム放出がシナプスのGABA_A受容体を安定化させていることを証明した.
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