2010 Fiscal Year Annual Research Report
受容体ダイナミクスとカルシウムシグナルによる神経制御機構あるいは病態の解明
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20700300
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
坂内 博子 独立行政法人理化学研究所, 発生神経生物研究チーム, 研究員 (40332340)
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Keywords | 抑制性シナプス / カルシウム / GABA_A受容体 / 1分子イメージング / 量子ドット / シナプス可塑性 |
Research Abstract |
神経伝達物質受容体は,細胞膜上を側方拡散することによりダイナミックにシナプス内外を出入りしている.受容体の側方拡散はシナプス伝達効率を決定する重要ファクターの1つであり,記憶学習の細胞レベル基礎過程である「シナプス可塑性」の分子基盤とである.我々は,抑制性神経伝達をつかさどるGABA_A受容体に注目して,その側方拡散制御機構の解明を目指している.昨年度までの研究により,(1)GABA_A受容体の側方拡散は複数の細胞内カルシウム信号により制御されていること,(2)細胞外からのカルシウム流入と細胞内カルシウム放出では真逆の効果を持つことがわかっている.今年度は,カルシウム信号を受容体の側方拡散へと変換する分子の探索を行った.1分子イメージング,定量的免疫染色法を用いて抑制性シナプス足場タンパク質の関与を検討したところ,このタンパク質はカルシウム信号を最初に感知する役割はなく,逆に受容体の側方拡散変化に応じて安定性を変化させていることが分かった.この結果は,これまで受容体を安定化すると信じられてきた足場タンパク質には,積極的にGABA_A受容体の側方拡散を制御する能力がないということを示唆する驚くべき結果であり,未同定のカルシウム感受性のGABA_A受容体安定化因子が存在することを意味している.さらに1分子イメージング実験により,カルシウム信号依存的なGABA_A受容体の側方拡散制御を行うリン酸化/脱リン酸化酵素の候補を発見することができた.これにより,複数のカルシウム信号によるGABA_A受容体の拡散制御機構を統合的に理解する見通しがたった.
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