Research Abstract |
本研究では模擬組織となるゲルのヤング率の簡易計測,ならびに組織配置を模擬するための2層ゲル作成法の確立を行いつつ,棒状アノード-管状カソード間の純水の絶縁破壊でジェットを駆動した時の,電極間距離dとカソード長(ノズル長)Lが,ジェットの速度Vと放出質量m,およびゲルへの貫入深さDに与える影響を調べた.アノードに外径2mm真鍮棒,カソードに外径1.3mm,肉厚0.1mm真鍮管を用い,コッククロフト回路で,電極間の精製水に絶縁破壊を起こしジェットを発生させた.印加電圧は4.2kVに固定し,dとLをそれぞれ0.25-1.25mm,20-40mmの範囲で変化させ,Vとmを計測した.Vは高速度カメラで画像計測し,mは吸水材の質量増分で計測した.d≦0.75mmでは,dの増加とともにVとmは増加し,両者の変化傾向は一致した.一方d≧1.0mmでは必ずしも両者は一致せず,特にVについてd=1.0mmで極度に小さくなった.本装置を威力可変型の切開装置とする際は,安定性からおよそ0.25mm≦d≦0.75mmの範囲内の適用が望ましいと判断できた.一方d=0.5mmに固定した場合のLとVならびにmの関係では,L>30mmの条件でVとmは共に減少する傾向があり,L≦30mmが適用条件だった.また電圧・電流波形より,時折現れる火花遅れ発生時の,負性コロナのトリチェルパルス発生時にジェットの威力上昇がみられる可能性もあった.今後要検討である.一方ヤング率が8~20kPaの6~7%ポリアクリルアミドゲルに対する切開性能の調査では,ジェットの陥入深さDはVやmとは逆に,dが小さいほうが大きい値になることが確認され,d=0.25mm,0.75mmのときはそれぞれ平均で4.88mmと3.60mmであった.この要因は不明瞭な点が多く今後解明の余地があるが,差が生ずる要因の一つはノズル内の圧力分布の時間変化の影響で,ジェットの作用に関して力積が変化するためと考えられる.
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