2008 Fiscal Year Annual Research Report
山鹿流兵法書の分析をもとにした武道概念形成についての研究
Project/Area Number |
20700486
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田井 健太郎 Tokyo Medical and Dental University, 教養部, 非常勤講師 (00454075)
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Keywords | 近世武芸 / 中世武術 / 山鹿流兵法 / 甲州流兵法 / 武士身分性 / 北条流兵法 |
Research Abstract |
本研究は、近世における武芸の成立を検討することで武道の文化的淵源を明らかにすることを目的とする。具体的には、中近世の武芸書の中で、中世、近世の武術・武芸の原理的特性がどのように成立していたのかを解明する。二年度計画の初年度に当たる本年度は、近世兵法書資料、特に甲州流兵法、山鹿流兵法資料の蒐集、調査にあてられた。蒐集、調査地として、鹿島神宮(六月)、会津若松(六月)、笛吹(十二月)を選び、現存史料の確認、蒐集を行った。特に笛吹調査では、山梨県立博物館、武田神社に所蔵される甲州流兵法および山鹿流兵法の兵法書、武芸書および関連品について調査閲覧、蒐集、聞き取り調査をおこなった。閲覧調査としては、近世兵法書の武術資料である『兵法秘伝書』をはじめ、五点について国内に現存する同系史料との異同について調査した。当館に所蔵される山鹿素行著作『兵法神武雄備集』は素行研究、兵法研究の貴重な資料であり、充分な調査成果を得た。聞き取り調査では、甲斐国の文化史を中心に知見を得た。これらは兵法、武芸の成立過程の解明を目指す本研究の課題に寄与するものである。 十一月には、山鹿流兵法書『修身受用抄』、『治平要録』における武士身分性の変遷の考察から、武士に内在する二つのメンタリティーの形成過程についての学会発表をおこなった。この発表では、武士身分観を感性的契機とする武芸が、戦闘者的武士身分観、士的武士身分観、さらには武教主義的武士観といった観念を反映させる文化態となっている可能性を示唆した。さらに現在、蒐集した史料から中世武術の原理的特性を考察した研究論文を準備中である。
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Research Products
(2 results)