2009 Fiscal Year Annual Research Report
東京オリンピックがもたらした遺産と都市空間の変容に関する社会学的研究
Project/Area Number |
20700499
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Research Institution | Kanto Gakuen University |
Principal Investigator |
石坂 友司 Kanto Gakuen University, 経済学部, 講師 (10375462)
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Keywords | 東京オリンピック / 都市空間 / オリンピックの遺産 / 開発 |
Research Abstract |
2016年夏季オリンピック大会招致に失敗したものの、東京都は2020年の招致を目指す意向であると言われる。仮に招致が決定すれば、1964年大会以来、アジアでは初の2回目の開催となる。東京都が示す開催の意義とは、東京がこれまで成熟を遂げてきた証を世界に示すことであり、大都市が様々な難問を克服してきた姿を範として示すことにあるという。2016年の大会招致に込められた東京都の期待はオリンピックを挺子とした都市開発と都市問題の解消にある。そこに位置付く正負の遺産こそが1964年大会によって作られたものである。 本年度は、1964年大会の開催前史にあたる1940年の、いわゆる「幻の東京オリンピック」に照準を合わせて考察した。この大会は、実現されなかったとは言え、スポーツ空間と都市空間の変容に確かな痕跡を残している。オリンピック開催に向けた競技場や道路の建設が中止に追い込まれる中、美化運動など、住民の主体的取り組みは戦時下における国家的動員・組織化の動きと重なり合っていった。また、オリンピックを開催することが都市に活力を与え、大規模開発を可能にするという現在では当たり前になった、都市開発への気づきが見いだされていくのである。さらに、選手強化や大会運営の組織化は、次第に国家に依存していきながら、スポーツ空間を構成していった。 これら都市空間とスポーツ空間は、一見異なる異相にありながら、オリンピックという個別具体的な事例の中で連関しているのである。オリンピックの前史、開催、そして開催後の動向をこれら空間の変容から把握するのが残された課題である。
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