2010 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおけるメディア・スポーツ文化に関する研究
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20700507
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
溝口 紀子 静岡文化芸術大学, 准教授 (40343727)
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Keywords | メディア / スポーツ / フランス / ユニバーサル・アクセス権 |
Research Abstract |
3年目の本年度は、本研究の最終年度であり、研究報告書の作成を中心に行った。初年度の現地調査、昨年度の国際シンポジウムで、討議されたグローバルな視点からの問題点、今後のメディア・スポーツのあり方についてまとめ、今後の我が国のメディア・スポーツのあり方やスポーツジャーナリズムについて報告書を作成し関係者に配布した。また研究の成果を東京大学大学院総合文化研究科社会経済学研究会(松原隆一郎教授)にて発表を行った。 フランスにおけるメディア・スポーツの環境はこの3年間で大きく変化してきている。1992年1月、フランスのスポーツとテレビ委員会(La Commission Sport et Television)は、国民の情報への権利とテレビ局の独占放送権との調整を目的とした紳士協定に基づいて、「スポーツ競技の放送に関する紳士協定」を制定し、スポーツの独占的な放映権のあり方に一定程度枠を設けていたが、研究開始時の当時のフランスのスポーツ市場では、スポーツ放映権料の高騰によりスポーツ自体が持つ公共性やグローバル化の中で意識されてきたユニバーサル・アクセス権などの公共論問題は影を潜めていた。しかし2008年9月に起きた国際的な金融危機リーマンショック以降、経済状況が変化し、2011年2月17日に欧州連合欧州司法裁判所の第一審裁判所(ルクセンブルク)は、サッカーワールドカップ、欧州選手権の試合を特定の有料テレビが独占放映するのはEU法に違反するとして、EU加盟国はこれを禁止することができるとの判断を示した。さらに第一審裁判所の判断は、EU各国は、ワールドカップなどスポーツ大会について、市民の情報に対する権利を保障するため、有料放映を禁止できると結論付けた。これにより、これまであまり議論されてこなかったフランスにおいても、「国民の関心が高い」スポーツイベントについて、幅広い市民が視聴できるよう、無料のテレビチャンネルでの放映を認めてユニバーサル・アクセス権が認識されつつある。
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Research Products
(1 results)