2010 Fiscal Year Annual Research Report
明清時代における生活空間の研究-家具とその使用を中心として
Project/Area Number |
20700576
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高井 たかね 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (80378885)
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Keywords | 住生活 / 家具史 / 生活空間 / 中国 |
Research Abstract |
今年度は(1)家具史・生活空間史に関する文献・画像史料の収集、(2)史料の整理、電子化、(3)史料の検討の各作業を引き続き行いデータを集積した。研究期間の最終年度にあたるため、(3)の作業を重点的に行い、その成果の一部は口頭発表により公表したほか、近刊の学術雑誌上で公表する予定である。主な内容は以下のとおり。 ・現代中国でも祝宴、儀礼などで重要な役割を果たす八仙卓という方卓について、その名が遅くとも明の弘治年間初めには江南地方で使われていたのを確認した。また、これは明代でも宴飲に使用される卓であり、現代での使用場面のように特別あらたまった席で使うのではないが、日常的な飲食ではなく客人と同席する時か家庭内の特別な行事に使用された。ある程度の礼節を求められる席では、これを使うことで一定の格式を表し最低限の礼節を保ったとみられる。 ・『金瓶梅詞話』にみえる牀類のうち、臥具として使用される抜歩牀、歓門牀、厰庁牀、有欄杵的牀、涼牀、暖牀、暖閣牀について名物学的方面から考察した。このうち牀前に小廊を持つ形式の抜歩牀は、文献、実物資料等を検討した結果、明、嘉靖以前の存在は確認できない。歓門牀は、牀の入口上部を仏殿門窓様式に模して花頭型にしたものである。厰庁牀、暖閣牀は他の文献上に用例がみえず、いずれも部屋の名称を冠して『詞話』作者が独自に創作した可能性がある。『金瓶梅』は現実社会の習俗を比較的忠実に投影しているといわれるが、当然ながらそこにみえる家具が全て現実を写したものとはいえない。このことは『金瓶梅』を史料として利用するにあたり、あくまでフィクションであることを念頭におき、一々検証を加える必要があることをあらためて示している。 なお、本研究で集積した資料は、将来的に明清生活空間史資料集として関連諸分野研究のために供したいと考え、引き続きデータを増補し、これまで集めた資料も校正、整理して後の公開に備える。
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Research Products
(3 results)