Research Abstract |
本研究は, 近年, 特にライフサイエンス分野・環境分野において物質分析の重要な地位を築きつつあるレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)のための新規なLDIプレートとして, シリコン基板上にナノ粒子と高分子を交互に積層吸着させた"ナノ粒子積層薄膜プレート"を開発する。このナノ粒子積層薄膜プレートと質量分析計を結合することにより、抽出操作が不要で(敏速分析), かつ高感度(サブフェムトmol以上), 高選択性を有するハイスループットなスクリーニング分析システムを実現することを目標とする。本年度は, LDI-MSのためのレーザー脱離ソフトイオン化を支援する金ナノ粒子担持イオン化基板として, カチオン性高分子(ポリアリルアミン塩酸塩)のバインダーとして, クエン酸アンモニウム塩で保護された金コロイドが積層された金ナノ粒子積層薄膜プレートを作製した。その際, (a)高分子や金コロイドの濃度, (b)高分子の種類や分子量, (c)浸漬時間, 及び(d)ナノ粒子の積層数を変えて, LDI-MSの高感度化を実現するための構造最適化を行った。その結果, 従来の金ナノ粒子を用いたLDI-MS用のイオン化基板と比べて, 標準試料として知られるアンジオテンシンIの検出感度が10倍向上し(数フェムトモル), チトクロームCなどのタンパク質も検出できるようになった。更にナノ粒子積層薄膜プレートに試料を濃縮させることにより, PRTR法「第一種指定化学物質」に指定されている陽イオン性界面活性剤としてビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウムクロリドの検出において, 10^<-17>g/Lという極微量の試料を検出できることが明らかとなった。
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