2009 Fiscal Year Annual Research Report
ハリケーン・カトリーナ災害における環境影響と都市再生
Project/Area Number |
20710139
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
原口 弥生 Ibaraki University, 人文学部, 准教授 (20375356)
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Keywords | カトリーナ災害 / 環境社会学 / アメリカ / 災害廃棄物 / 環境人種差別 / 湿地保全 / 複合災害 |
Research Abstract |
本研究は、2005年夏に米国南部で発生した大規模ハリケーン災害に関する環境影響の総合的把握と、災害に由来する環境問題への政治的社会的対応について、特に人種関係に留意しつつ明らかにすることを目的としている。対象事例であるハリケーン・カトリーナ災害においては、大都市ニューオリンズが壊滅的状況に陥っており、災害の影響は広く深い。そのため昨年度の調査により、(1)災害廃棄物をめぐる紛争、(2)災害対策としての湿地保全をめぐる環境政策上の歴史的転換、(3)石油流出事故という複合災害の発生、といり3点に研究の焦点を絞り、今年度は調査を行った。 (1)災害廃棄物をめぐる紛争に関しては、処分場予定地とされたベトナム系コミュニティを中心に調査を行った。その結果、一見、災害弱者にも分類され得るこのアジア系コミュニティが有する潜在的な災害対応能力の高さが明らかとなった。これにより災害廃棄物処分場の閉鎖を導いたこと、さらにその後、従来から市内の廃棄物処分場が集中していたニューオリンズ東部全体で環境正義をもとめる運動が展開されつつあることも明らかとなっており、被災を契機とした環境をめぐる社会関係の変化を指摘できる。(2)湿地保全については、災害前後で大きく認識が変化し、現在策定中のニューオリンズ市の都市開発計画の中においても災害対策として初めて湿地保全が位置づけられたことを確認した。ニューオリンズ都市圏における激甚被災地の背後には湿地が広がっており、湿地を破壊しながら原油・ガス掘削や重化学工業化を推し進めてきた当地において、重大な方針転換であると評価できる。これ以外にも、(3)石油流出事故についても現地調査を行った。 近年の災害研究で注目されている「レジリエンス」概念本事例分析にも有効であると感じ、この概念をキーワードとした発表を第40回環境社会学会大会にて行った。本発表をもとにした論文を現在執筆中である。
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Research Products
(4 results)