2009 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝暗号の拡張を用いたエステル結合を含むポリマーの合成法の開発
Project/Area Number |
20710177
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 隆嗣 The Institute of Physical and Chemical Research, システム研究チーム, 特別研究員 (90446518)
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Keywords | 遺伝暗号 / 非天然型アミノ酸 / 翻訳 / tRNA / アミノアシルtRNA合成酵素 / タンパク質工学 / ポリエステル / 高分子化学 |
Research Abstract |
本研究では、α-アミノ酸のみならずα-ヒドロキシ酸(HA)を構成要素として用いることができるように拡張された遺伝暗号の翻訳系を、実用レベルまで改良・発展させることを目的とする。つまり、ピロリジルtRNA合成酵素(PylRS)によるtRNA^<pyl>へ付加できるHAの種類と、tRNA^<pyl>が対応するコドンの種類を拡張することによって、効率よく複数個のHAを含む均一なポリマーを試験管内もしくは生細胞中で合成する技術基盤を確立することを目標としている。 本年度は、HAが連続して重合したポリエステルが効率よく生成される条件を検討した。HAとして、まずN_E-Boc-リジンHAアナログを用い、それを効率よく認識するPylRS変異体およびTTCコドンに対応するように改変したtRNA^<pyl>変異体を用いて、TTCコドンへのN_EBoc-リジンHAアナログ(Boc-OH)の導入を試みた。2つの連続するTTCコドンに対しては、予想を下回る導入効率であった。さらに内在性のフェニルアラニルtRNA合成酵素によるTTCへのフェニルアラニン(Phe)導入もわずかに観察された。次にフェニル乳酸をHAとして、それを認識するPylRS変異体とともに上と同様にして翻訳を行った。単一コドンのサプレッションについては,Boc-OHよりもはるかに高い効率を示した。また、Boc-OHに比べて2連続の重合の効率が有意に上がった。しかし、単一コドンのサプレッション効率から推測される効率を下回った。10個のTTCコドンを並べた場合には、翻訳が最後まで進まなかった。 以上のことから、連続したHAの導入はリボソームの翻訳活性を阻害すると考えられる。その原因として、tRNA^<pyl>に特有のDループの欠損した構造が、翻訳複合体を不安定化していることが示唆された。
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