2009 Fiscal Year Annual Research Report
ミャンマー・カレン村落の焼畑土地利用履歴と森林生態系の長期的変遷に関する研究
Project/Area Number |
20710189
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 玲治 Kyoto University, 生存基盤科学研究ユニット, 助教 (60378825)
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Keywords | 休閑地植生 / タケの再生 / 長期休閑 / 地域情報学 / リモートセンシング / 衛星画像 / 残存林 / 持続性 |
Research Abstract |
過去約20年間のS村の焼畑土地利用履歴を時間的・空間的に再構成するため、1988-2006年度の衛星画像(JERS・LANDSAT)を用い、調査地周辺の土地被覆をClass1(木本が優占する群落)、Class2(タケが優占する群落やイネ科の高茎草本群落)、Class3(焼畑地・裸地)に分類した土地被覆区分図を作成した(教師付分類・最尤法)。これらの土地被覆区分図を全て重ね合わせ、土地被覆が常にClass1であった場所を残存林として抽出した。残存林は村落面積の約13%にあたる657.5haで、集落中心から1km以内が最も残存林の面積割合が高く、その外側では集落中心から離れるほど面積割合が高くなる傾向を示した。この結果、集落中心から1km以内は水源涵養や薪炭採取のための村落共有林が保全され、集落中心から概ね1-4km以内の森林がよく焼畑に開かれ、4km以上離れた森林では伐開頻度が低いことが確認できた。 また、近年はClass2の植生を焼畑に伐開する世帯が増えていることが確認された。S村には残存林を新たに伐開する余地は十分にあるが、これらの多くは集落中心から離れているため、集落中心から比較的近く、伐採が容易でよく燃えるタケ群落が好んで開かれたものと思われる。植生調査の結果、タケが優占する群落を伐開した焼畑地では、休閑4年目にはタケの旺盛な再生が認められたが、木本が優占する群落を伐開した焼畑地ではタケの再生がほとんど認められず、休閑4年目ではイネ科の草本が優占していたことが確認された。熱帯のタケは地下茎で分布を拡大しないため、タケの優占している休閑林を伐開し、タケの早期の回復を利用して12年程度のサイクルで焼畑を繰り返すことは、植生回復の観点からも非常に合理的である。また、この結果、木本群落の伐採が抑制され、近年のClass1の緩やかな増加の一因となっている可能性が示唆された。
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