2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミャンマー・カレン村落の焼畑土地利用履歴と森林生態系の長期的変遷に関する研究
Project/Area Number |
20710189
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 玲治 京都大学, 生存基盤科学研究ユニット, 助教 (60378825)
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Keywords | 休閑地植生 / タケの再生 / タケの一斉開花 / リモートセンシング / 衛星画像 / 地域情報学 / 火入れ / 持続性 |
Research Abstract |
ミャンマー・バゴー山地で焼畑を営むカレンのS村において、衛星画像から作成した植生図と過去の焼畑位置図を重ね、焼畑伐開前の植生を解析した結果、約9割の焼畑でタケの優占する林分が伐開されていたことがわかった。S村全域の土地被覆は木本が32%、タケが44%、草本が14%、裸地・その他が10%であり、休閑年数の長い木本の優占する林分を伐開する余地は十分にある。しかしながら、S村では伐採が容易で良好な火入れをもたらすという理由から、タケに少量の木本が混生する二次林が好んで焼畑に伐開されることが聞き取り調査で確認されており、このことがGIS/RSを活用した解析結果からも裏付けられた。また、タケの優占する二次林の伐採・火入れは、休閑初期の早期の植生回復を促す上でも有効なことが、これまでの研究で明らかにされている(鈴木他2007)。 このように、S村ではタケの伐採・火入れを中心に焼畑が営まれているが、2009年3月よりS村周辺ではホウライチク属のタケであるBambusa tuldaの一斉開花が始まり、S村内では約140haの竹林が枯死したと推定された。立ち枯れ直後のタケは非常に堅く、伐採が困難であることから、2010年の焼畑はタケの枯死地帯を避けて伐開されたが、開花後のタケの実生が再び焼畑に伐採できる程度に生長するにはかなりの年月を要するため、2011年以降のS村の焼畑伐開地選択にも大きな影響を与えることが予想される。また、タケの開花後に大量発生したネズミの食害で、2009-2010年伐開の焼畑の陸稲は壊滅的な打撃を被った。ネズミの食害によるリスク分散のため、2011年はお互いの焼畑を離して伐開することが検討されている。このように、数十年に一度発生するタケの一斉開花は、最適な焼畑伐開地の減少と焼畑作物の収量激減という二重の災いをもたらし、焼畑伐開地選択にも大きな影響を与えることが確認された。
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